パワーサイクル試験
パワーモジュールでは、kWレベルの大電力を扱うため、通電のON/OFFを繰り返すことで熱応力が発生し、製品内部及び製品を放熱系統に取りつける部分に大きなストレスが発生します。
ストレスが繰り返し発生すると、
- 製品の性能低下や破壊
- 製品を取りつけるグリース劣化による放熱性低下に伴う製品破壊
といった症状が見られるようになります。
パワーサイクル試験は、このような課題に対する実⼒及び寿命を予測するために⾏われる試験項目のひとつです。
目的に応じ、ショートパワーサイクル、ロングパワーサイクルといった2 種類の試験があります。対応する試験は規格として制定されており、JEITA-ED-4701/601 602 603。車載用電子部品ではAEC-Q101で規格化されています。
また、規格に準拠した試験以外にも、グリース評価をするための試験や、SiC等の開発で双方向通電をおこなう等、目的によって様々な条件で試験が実施されています。
WTIでは、品種や条件で多くの組み合わせがある中、得意のカスタム計測・制御技術を活かし、制御環境の構築及び改良をおこなっております。実際の試験は、専用の試験ルームと人員を確保されているパートナー会社で試験受託しており、協業する形でビジネスを展開しております。特にAEC-Q101では、ロット77台×3ロットの試験を行う必用があり、対応が可能な受託会社は非常に限られます。
パワーデバイスの開発サポートという着眼で見ると、WTIではパワーモジュールの静特性評価・スイッチング評価はもちろんのこと、10年以上の経験を活かし、熱・応力解析による構造開発サポートもおこなうことが可能です。
また、モジュール単体だけではなく、DC-DCコンバータ等の電源システム開発までWTI内でサポートできる体制が整っております(~数kWクラスまで)。WTIはデバイスからシステムまで、お客様の課題に対し、広範囲にサポートすることができる稀な会社です。
自動車では世界的なEV推進の加速により、電動化の波が押し寄せてきております。これからの時代、各社が得意な技術を持ち合い、協業により技術開発を加速していくことが益々重要になってくると考えています。
WTIの活用をお待ちしております。
パワーデバイス・パワーモジュール評価事例
1.静特性評価
カーブトレーサを用い、静特性データを取得。
2000V、400Aクラスまでの製品に対応可能。
従来、2台のカーブトレーサを使い分けて測定する必要のあった製品を一括で自動計測。
2.動特性評価
600V、300Aクラスの評価実績あり。
評価環境抜粋
等価回路例
代表波形
※ゲートドライバはお客様支給を前提としております。
個別準備も可能ですが、その場合、個別に相談となります。
3.構造解析、信頼性試験
- クロスセクション
表面、断面解析等、目的に応じて実施内容をご提案いたします。- 信頼性試験
弊社及びパートナー会社にて、各種信頼性試験を行うことができます。
パワーサイクル試験については、内容をお聞きしパートナー会社の紹介含め、個別にご提案いたします。4.パワーサイクル試験(パートナー会社様提供)
①パワーサイクル試験の動作原理
- ゲート電圧(VG)印加するとドレイン電流(ID)が流れます。
- IDが流れるとパワ-チップの温度(Tj)が急上昇します。
- パワーチップの熱はケース側(Tc)に向かって流れることになります。
- この原理を利用して、パワーサイクル試験を実施します。
これらID/Tj/Tc値を用いて、試験の条件出しを行います。
②ショートパワーサイクル(参考:JEITA-ED-4701/601 602)
主にスイッチングデバイス等の、パッケージ温度(Tc)が比較的安定した状態で、ON/OFF動作の繰り返しを再現した試験です。
チップから上の部分における、材料間の線膨張係数の違いによる劣化評価です。
③ロングーパワーサイクル(参考:JEITA-ED-4701/603)
主にパワーデバイスのON/OFF動作を繰り返し再現した試験です。
チップから下の部分における、材料間の線膨張係数の違いによる劣化評価です。
試験サンプル | MOSFETモジュール事例 |
試験条件 | ID=250A(ON/OFF制御) ON/OFF=2/2minVGS=15V(常時印加)ΔTj=100℃(50~150℃) 10kcyc |
冷却方式 | 空冷ファン方針 |
常時モニタ | 各VDS(ON)、各Tc |
アラーム機能 |
VDS、IDS上限 DC電源OFF Tc上限 電源ブレーカー遮断 |
④故障モードについて
故障モードは、ショートやオープン不良が主となります。
- チップ過電流破壊
- 温度変化による繰返し疲労でのクラック、剥離(断続動作モード)
- 温度変化による繰返し疲労でのクラック、剥離(パワーサイクルモード)
⑤試験環境抜粋(パートナー会社)
5.パワーモジュール通電制御環境構築例
<前提条件>
①Tjが最大定格を超えない範囲で、モジュールのケース温度を極力短時間で上下させることを目的に、可変電力制御を適用。
②6素子が全て直列接続されている。
③1素子あたり1kW程度の電力範囲で6素子同時に可変電力制御をおこなう。
④各端子と温度の波形を全て記録する。<適用技術>
デジタルフィードバックで高速で制御させるため、次の構成を選択。
①制御の中心にRTOS(リアルタイムOS)とFPGAを組み合わせた制御ボードを選択。プロトタイピング設計を前提に、NI(ナショナルインスツルメンツ)社のボードを使い、LabVIEWで設計。
②入出力絶縁とモジュール制御のため、カスタム基板設計。
基板①とコントローラ基板
基板②
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