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EMIフィルタってノイズ対策にどれだけ効くの? (1)

テクノシェルパ技術コンサルタントの原田です。

ノイズ対策のためにEMIフィルタを用いる  皆さんが最もよく用いる手法のひとつではないかと思います。しかし同時に、どのようなフィルタを用いれば良いのかを見極めることはなかなか難しいことだと感じておられないでしょうか。

今回、そのような疑問に応えるため、EMIフィルタの評価指標と実際の効果について、2回に分けて説明をしたいと思います。

第1回はEMIフィルタの評価指標について、第2回は評価指標のひとつとしての減衰量と実際の効果を比較し、効果的なノイズ対策のために考慮すべきことを述べます。

 

<EMIフィルタの評価指標>

まずはEMIフィルタの評価指標についてです。EMIフィルタの性能を表すのに、主にインピーダンスと減衰量の2つの指標があります。

 

1. インピーダンス(Z

EMIフィルタの基本素子である単体のコンデンサC、インダクタLについて、インピーダンスの周波数特性の一例を見ると図1のようになります。

 

図1 理想的な基本素子のインピーダンス

 

素子自体の持つ特性を表す指標であり、EMIフィルタに限らず広く用いられています。ただ、これだけではどの程度ノイズ抑制効果が期待できるのかCは右肩下がり、Lは右肩上がりと逆の傾向を示すことも直観的な理解を困難にしています。

 

2. 減衰量

減衰量、あるいは動作減衰量とよばれる指標で、

としたときVAVBの比をとったものであり、

と表されます。

また、一般的には送信側、負荷側とも50 Ω(50 Ω系)で評価され、その場合、減衰量=S21が成立します。

 

図2 減衰量の定義

 

図3は、図1と同じ定数のCLの、50 Ω系における減衰量の周波数特性になります。定義からわかるとおり、減衰量は負荷にかかる電圧の差異を表しています。またインピーダンスと異なり、CLも右肩下がりと同じ傾向を示すことがわかります。なお、この傾きは-20 dB/decadeとなります。

 

図3 理想的な基本素子の減衰量

 

このように減衰量では、フィルタを入れることによりどれくらいノイズが下がるのかがわかるという利点があります。このほか、減衰量が-3 dBになる周波数をカットオフ周波数といい、この周波数までの信号は通過し、それ以上でフィルタ効果が現れる指標として用いられます。

最近では素子の特性はインピーダンスで表されることが多い印象がありますが、これら特徴のある減衰量について話を進めたいと思います。

 

<減衰量に関する注意点>

フィルタ効果を直観的に理解しやすい減衰量ですが、その解釈の方法についてはいくつかの注意が必要です。

 

まず、先ほど説明したとおり、減衰量は50 Ω系での評価になっていますが、実際の回路の入力側、負荷側のインピーダンスは50 Ωとは限りません。また、図4(a)のようなグラフを資料等で目にする事があります。減衰量は素子単体では20 dBの傾きをもち、2つ組み合わせるとそれが40 dBになり、3つだと60 dBになる、と言うものです。

しかし、これはL=C×502 (50 Ω系での評価において)の関係にある素子を用いたときのみに成り立つものであり、その条件以外だと、例えば図4(b)のように全く異なった特性を示します。単純化されたこのような関係は頭に残りやすいものですが、前提条件を意識し、思い違いをしないよう注意が必要となります。

 

図4 素子数による減衰量の傾き

 

次回は減衰量と実際の効果を比較し、効果的なノイズ対策のために考慮すべきことを述べたいと思います。

 

当社にはiNARTE認定のEMCエンジニア、経験豊富なEMC対策・評価のプロフェッショナルがおります。皆様のお困りごとの解決に是非、EMC対策コンサルサービスをご利用ください。

 

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