テクノシェルパ技術コンサルタントの原田です。
これまでEMCについての情報発信を行ってきましたが、今回はそもそもEMCとは何かという基本的な定義や歴史について触れてみたいと思います。
<EMCとは>
EMCはElectroMagnetic Compatibilityの略であり、日本語では電磁的両立性、電磁環境適合性、環境電磁工学などとよばれています。その定義は様々ありますが、JISにおいては以下とされています。
装置又はシステムの存在する環境において,許容できないような電磁妨害をいかなるものに対しても与えず,かつ,その電磁環境において満足に機能するための装置又はシステムの能力。
ここで、電磁妨害とは「機器,装置又はシステムの性能を低下させる可能性があり,又は生物,無生物にかかわらずすべてのものに悪影響を及ぼす可能性がある電磁現象」とされていて、これが一般的にノイズといわれるものになります。また、「与えず」の部分をエミッション、「満足に機能する」の部分をイミュニティといい、その総称としてEMCとよばれています(図1)。
図1. EMCとは
そのほかよく用いられる用語として、以下のようなものがあります。
- EMI(ElectroMagnetic Interference): ノイズによって引き起こされる装置,伝送チャネル又はシステムの性能低下。ノイズと同義に使われることが多い。
- EMS(ElectroMagnetic Susceptibility): イミュニティの逆で、ノイズによる性能劣化のしやすさ(感受性)を意味する。
<EMCの歴史>
今日ではデジタル機器の障害というイメージが強いEMCですが、その歴史は意外に長く、もともとは無線電信の障害が発端となっていて、その主な原因は無線局同士の干渉でした。このため、EMCは「規制」という側面が大きく、古くは1904年に米国のルーズベルト大統領が、私的無線局は商務省、政府の無線局は海軍が管理するよう、大統領令を発しています。
その後、ラジオ放送が普及し、ラジオの受信障害が顕著になってきました。障害の原因として、自動車からのイグニッションノイズやいわゆるISM機器(Industrial, Scientific and Medical equipment)など、無線局ではない機器から発せられるノイズがクローズアップされることになります。これら問題を解決すべく1934年、米国連邦通信委員会(FCC)および国際無線障害特別委員会(CISPR)が相次いで設立されました。
規制の対象外であったデジタル技術を用いた機器が普及すると、受信機への障害だけでなくデジタル機器自身の誤動作という問題が顕在化しました。これらを規制するため、1979年、FCCがデジタル機器のエミッションに関する規格を発行し、1989年には欧州においてエミッションおよびイミュニティを規制するEMC指令が発行されました。日本では1985年に情報処理装置等電波障害自主規制協議会(現在のVCCI協会)が設立され、自主規制という形でデジタル機器に対する規制を開始し、現在に至っています。
規制以外の側面では、近年の電子機器の高速化・高周波化・小型化・低電圧化に伴い、機器内で発生した微弱なノイズにより、その機器の機能自体が劣化する問題が増えてきている現状があります。これらはイントラEMCとか自家中毒などといわれています。
当社にはiNARTE認定のEMCエンジニア、経験豊富なEMC対策・評価のプロフェッショナルがおります。皆様のお困りごとの解決に是非、EMC対策コンサルサービスをご利用ください。
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