みなさん こんにちは。テクノシェルパ技術コンサルタントの河野です。
前回のブログ・スミスチャートとは? ~きちんと知ると便利です~(その5)では特性インピーダンスZ0 = 50Ωの線路とオープンスタブによるインピーダンス変換をご説明いたしました。
今回は、特性インピーダンスZ0 = 50Ωの線路とショートスタブによるインピーダンス変換をご説明いたします。
ちなみにショートスタブとは、先端が接地状態の伝送線路のことであり、このスタブの特性インピーダンスをZsとすると、ショートスタブと伝送線路の交点のインピーダンス は次式で求められます。
また、次のとおりショートスタブの長さにより動作が変化します。(図1)
のときはシャントのインダクタンス
のときはシャントのキャパシタンス
それでは、Z1が純抵抗(スミスチャートの実軸上)の場合の具体例でご説明していきます。
図2に示すとおり、インピーダンスZ1 = 100 + j0 ΩをZ0 = 50 Ωの線路(a)とショートスタブ(b)でインピーダンスZ2 = 50 + j0 Ωへの変換をアドミッタンスチャート上で求めます。
① Z1 = 100 + j0 Ωをアドミッタンスに変換し、正規化すれば、y1 = 0.5 + j0 Sです。Z0 = 50 Ωの線路に接続されているので、Y0 = 0.02 Sのアドミッタンスチャートにプロットされます。つまり、y1はアドミッタンスチャートの実軸0.5の位置にプロットされます。
② (a)の線路での移動は、y0を中心に反射係数ベクトル”2”の円に沿って、時計回りに回転し、コンダクタンス”1”の定コンダクタンス円との交点y3まで移動します。 中心y0からy3点を通過する直線を作図します。この回転角θa = 109.5°となります。λ/2でスミスチャートを1回転することを以前説明しました。よって(a)の線路長Aは0.152 λであることがわかります。(図3)
③ y3の容量性サセプタンスは+j0.72 Sであり、ショートスタブもしくは、並列インダクタンスを接続すればy0(y2)へ移動することができます。並列インダクタンスの求め方は、”スミスチャートとは? ~きちんと知ると便利です~(その3)”にてご説明していますので、そちらをご覧ください。
④ オープンスタブ(b)の長さBを求めるには、まずy3の共役点y3'から等サセプタンス円を延長した線とアドミッタンスチャートの外周との交点と中心y0を結びます。この回転角θb = 109.5°となります。オープンスタブの長さは、ショートの位置(アドミッタンスチャートの”∞”位置)から時計回りに109.5° 回転した線路長となるので、(b)の線路長Bは0.152λであることがわかります。(図4)
ただし、実際にショートスタブでインピーダンス変換を行おうとした場合には、スタブを接地しなければならないので、線路長の微妙な調整が困難です。よって、こういった場合においても線路長の微妙な調整が容易なオープンスタブでインピーダンス変換を行う方が実践的といえます。
図5のような回路構成で、図6に示すアドミッタンスチャートの軌跡にてインピーダンス変換ができます。Z0 = 50 Ωの線路でy0を中心に反射係数ベクトル”2”の円に沿って、時計回りに回転し、コンダクタンス”1”の 定コンダクタンス円と誘導性領域での交点y4まで移動します。そこからオープンスタブでy2まで移動できます。これは前回の説明”ブログ・スミスチャートとは? ~きちんと知ると便利です~(その5)”と同じなので、詳しい説明は割愛します。
今回のご説明は以上です。
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