みなさんこんにちは。
テクノシェルパ技術コンサルタントの森です。
Wave Technologyでは、実践的な技術者教育のノウハウを盛り込んだ技術講座をサービスブランド『テクノシェルパ』としてご提供しています。ご提供メニューの一つである 『電子回路の基礎講座PLUS(二日間コース)』では、半導体を用いた基本回路であるLEDの点灯回路についても学んでいただくことができます。
今回は、このLED点灯回路についてご紹介させていただきます。
(1)LED点灯回路の設計手順
図1はLED点灯回路の基本例です。この回路をどのように設計するか簡単に手順をご紹介します。
- LEDを点灯させるのに必要な順方向電流IFをメーカーのデータシートから求める。
- 同じデータシートからIFに対応する順方向電圧VFも求める。
- この回路には抵抗RがあるのでRにもIFが流れる。オームの法則によってRには電圧Vrが発生する。
- 電源電圧E0とVF+Vrは等しい(キルヒホッフの第二法則)
- 以上からRの値を求めると、
このように意外に簡単に求められます。
この式は半導体と抵抗を組み合わせた基本回路として広く応用できる便利な式ですが、式を覚える必要は全くありません。オームの法則とキルヒフホッフの法則という2つの法則の考え方さえ理解していればいつでも導けますし、複雑な回路を紐解くのにも必ず役立ちます。
(2)実設計の検討要素の例
さて、LEDといえば、省エネの代表格の製品としてLED照明を思い浮かべられる方も多いのではないでしょうか。ということで、このLED点灯回路の消費電力についても考えてみましょう。
消費電力Pは、P = VIで求められます。したがって、この回路の消費電力P0は、
P0 = E0IF
として求まります。仮にこのLED点灯回路がひとつの照明器具であるとすれば、P0の大小によって省エネの度合いを判断することになります。
回路全体の消費電力はこれで良いのですが、ここで注意したいのは、LEDと抵抗Rの各々が電力を消費するということです。電子部品のデータシートには、絶対最大定格(単に「定格」ともいいます)という複数の項目があり、各項目の定格値は超えてはならないのです。したがって、LED点灯回路の設計に際し、消費電力を検証する場合は、部品ごとの消費電力がその定格を超えていないことは必須で、これを満足した上で回路全体がいくらの電力を消費するかを考えるということになります。
ありがちなこととして、LED単体の消費電力が定格を超えないことだけに意識が集中してしまい、抵抗Rの消費電力が定格を超えてしまったり、LEDの消費電力は小さく抑えたつもりでも抵抗RでLEDの数倍の電力消費になっていたりということも起きてしまいます。
今回は消費電力を例にとりましたが、この外にも使用温度による諸特性の変化や、特性のバラツキなど、実設計には広く奥深い様々な検討要素が伴います。
(3)回路の原理原則と実設計の考え方が大切
今回ご紹介したLED点灯回路一つをとっても、実設計を行おうとすると様々な検討要素が発生しますが、これから回路の実務を始めようとされる方にオススメするのは以下の2つです。
- 回路を原理原則に則ってしっかり理解する。
- 実設計においては、部品・回路の各々について考え方の基本を身につける。
実務で扱う回路も部品も、本当に多種多様です。暗記に頼ってこれら実務を処理することなどできるものではありません。しかし、回路の原理原則や考え方の基本をみなさんが理解することは決して難しいことではありません。これができれば、多種多様な実設計に柔軟に対応することが可能になります。
今回は、LED点灯回路を例にとり、設計の基本と実践例についてご紹介させていただきました。
テクノシェルパの提供メニューの『電子回路の基礎講座PLUS(二日間コース)』は、このブログでご紹介したLED点灯回路の実設計要素についても、実際の部品のデータシートを用いた演習をとおして学んでいただくことができます。
電気系以外の方で電子回路技術習得を必要とされる方、新人技術者の方の育成を必要とされる方、回路技術者の育成手段で悩まれておられる企業様等に最適なプログラムとなっておりますので、是非ご活用ください。
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