テクノシェルパ技術コンサルタントの原田です。
EMCの話題となると、世間一般の関心はどうしてもEMC対策や規格の動向に集中してしまうようです。
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しかし、EMC評価の基本となるのは測定であることは言うまでもありません。測定値に影響を与える因子は数多くあり、正しく測定するためには、規格書に書かれている内容以外にも、さまざまなノウハウが必要になります。
このため、今回はEMCの測定に関する注意点を少しご紹介したく思います。
放射エミッションの測定では、アンテナゲインの関係で受信電圧が十分でなく、スペアナやレシーバで測定したとき、これら測定器のベースノイズに信号が隠れてしまう場合があります。このような場合、信号が見えるようにプリアンプを測定器の前段に入れることがよくあります。
この際、注意しなければならないのはプリアンプの飽和特性です。
全てのアンプは図1のように入力レベルに対して出力レベルのゲインが飽和するポイントがあります。これは1dB圧縮ポイント(P1dB)と呼ばれています。
図1 アンプの入力 / 出力レベルの関係
入力信号レベルがこのようなプリアンプの飽和領域に達していると出力信号が歪んでしまい、入力信号にはなかった周波数成分がスペクトラムとして現れてしまいます。
スペアナで測定する場合、測定器に表示されている範囲に特に大きな信号が見られなければ、つい見落としてしまいがちですが、測定周波数範囲外に大きな信号があればプリアンプが飽和してしまいます。
この場合、その歪んだ信号のスペクトラム成分が測定周波数範囲に現れてしまい、いくらその周波数帯でノイズを抑えようと頑張っても効果が現れない、ということを招いてしまいます。
プリアンプが飽和しているかどうかを確認するために、プリアンプの前段にアッテネータを挿入し、その前後の受信レベルを比較する方法があります。例えば10 dBのアッテネータを挿入すると、プリアンプが飽和していなければアッテネータどおりに、10 dB信号レベルが下がります。しかし、飽和しているとそれ以上に信号レベルが下がるので容易に飽和の有無を確認することができます。
ノイズの評価を行う前にはこのようなケースも想定して、事前に正しく測れているかを確認することが必要です。
当社にはこのようなノウハウを持ったiNARTE認定のEMCエンジニア、経験豊富なEMC対策・評価のプロフェッショナルがおります。皆様のお困りごとの解決に是非、EMC対策コンサルサービスをご利用ください。
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