みなさん こんにちは。テクノシェルパ技術コンサルタントの河野です。
今回は高周波回路の設計や評価に不可欠なスミスチャートについて簡単に紹介します。
みなさんはスミスチャートという言葉を聞かれたことがあるでしょうか?高周波回路のいろいろな問題を数式を用いて解くことは、複素計算になるのでかなり面倒です。スミスチャートは、このような複雑な複素計算を図表上で簡単に行うことができるようグラフ化されたものです。
このスミスチャートを利用すると、高周波回路を考えるうえでとても便利なんです。かくいう私も以前は高周波増幅器の設計評価を行っていましたが、スミスチャートを眺めながら回路構成をいろいろ考えたものです。
それではごく簡単にスミスチャートの説明をしておきますね。
図がスミスチャートです。(実際のチャートには円外に種々目盛りがありますが、ここでは省略しています。)
- この円の水平軸が複素反射係数*の実数部、垂直軸は虚数部を表します。
(* 反射係数は入射電圧に対する反射電圧の比を表し、ベクトル数値(複素数)です。) - インピーダンスの実部(抵抗)成分は周波数によらず一定なので各円上は等抵抗であることを表します(等抵抗円と言います)。
- 上下に曲がった円弧上はインピーダンスの虚部(リアクタンス)成分が一定なので等リアクタンス円と言います。
- 円の上半円部分は誘導性(インダクタンス)成分で、下半円部分は容量性(コンダクタンス)成分を表します。
- さらに円の真ん中は普通"1”です。Z0で正規化してます。(実際のインピーダンスを特性インピーダンスZ0で除したものを正規化インピーダンスと呼びます。特性インピーダンスとは、分布定数回路上を伝わっている電圧の波と電流の波の比として定義され、Z0は50Ωや75Ωが一般的です。(ひとまず言葉の定義としてだけご理解ください。これらの詳細については別途ご説明したいと思います。)
すごくざっくりですが、スミスチャートの簡単な説明は以上です。
では、ここで具体的にいくつかのインピーダンスをZ0=50Ωで正規化したスミスチャートにプロットしてみましょう。
インピーダンス |
正規化 インピーダンス |
Z1=∞(オープン、開放) | z1=∞ |
Z2=0(ショート、短絡) | z2=0 |
Z3=50 Ω | z3=1 |
Z4=100 Ω | z4=2 |
Z5=-j100 Ω | z5=-j2 |
Z6=25+j100 Ω | z6=0.5+j2 |
正規化インピーダンスz1からz4までは、虚数部がすべてゼロなので、すべて実軸上にプロットされます。z1は右端の∞、z2は左端の0、z3は真ん中の1、z4は2の位置にプロットされます。
次にz5は実数部がゼロなので、一番外の円上と-j2(チャート上では-2.0j)の交点にプロットされます。最後にz6は、0.5の等抵抗円とj2(チャート上では+2.0j)の等リアクタンス円の交点にプロットされます。
こうしてスミスチャート上にプロットされたインピーダンスをどのように任意の点に動かしていくのかをこのチャート上で考えます。スミスチャートを理解して、実際に考えたとおりの軌跡を描き、思いどおりの設計ができるとうれしいものです。この喜びを味わうことが私の仕事のやりがいとなっていました。
今回はここまでのご説明とさせていただきます。
次回はその思い通りに軌跡をたどるためのご説明をしたいと思います。
※スミスチャート解説動画をご覧ください。
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