電子機器を安定に動作させるには、中の電子部品の温度が上がりすぎないよう、冷却することが欠かせません。
冷却には、水冷、空冷、蒸発冷却などがありますが、比較的低コストで保守も容易な空冷を用いることが多いものです。
空冷には自然空冷と強制空冷がありますが、中でもファンを使った強制空冷はよく見かけますよね。 電子機器の背面などの筐体に穴を取り付けられたあのファンです。
ところで、電子機器に取り付けられたファンは、どちらからどちらに空気を送り込んでいるのでしょうか?
電子機器の内側から外側へ? それとも外側から内側へ?
いずれでしょうか。
どちらかが決定的に正しいということはないのですが、実際に多く使われているのは「内から外へ」です。
これらそれぞれは、長所・短所を持っています。
「外から内へ」の方を例に取って、長所・短所を挙げると以下のようになります。「内から外へ」はこの反対と考えてください。
長所:外からの冷たい空気がファンを通過するので、ファンの寿命が延びる。電子部品は高温になるほど、動作寿命が短くなることが一般的であり、ファンについても同じことが言えます。
短所:電子機器の外にあった紙類やホコリなどがファンの穴を塞いでしまった場合、ファンに負荷がかかることは勿論ですが、中に向かって冷たい空気が送り込まれなくなり、高温になった結果、電子機器が故障してしまうリスクがあります。
このように、ファンの風向の向きひとつとっても、熱設計には、考慮すべきポイントがあるということが分かります。
放熱は電子部品の配置・発熱量・発熱箇所、筐体の形状・材質・大きさを始めとして様々な要素に影響されます。
これらを人の勘や経験だけで正しく見極めて熱設計することは結構難しいのです。
そこで、熱、そして熱による応力まで含めて詳細に計算で求めて電子機器の設計を行うことが肝要です。
なかなか手間のかかる作業ですし、過去から積み重ねてきた知見がないと、計算結果を読み解いて、「ではどうすればよいか」という解を導くのは簡単ではありません。
そのような知見や実績を持った社内の専門家に相談することが大事ですが、もしそのような技術者が社内にいなければ、社外の専門家に相談するという手段を考えることが現実的でしょう。
自社で試行錯誤してなんとかしようと頑張るのも素晴らしいことではありますが、その結果として時間が過ぎた挙句に開発が完了しないというリスクがあることもよく考えておかなければなりません。
熱や応力の精密な計算とその計算結果から「次の一手」をアドバイスできる開発設計会社を見つけて、コンサルティングを依頼することも常に念頭に置きましょう。
また、自社で熱や応力のシミュレーションを行おうと思って高価なシミュレータを購入したものの、その後、継続して面倒を見る人がいなくなり、結果、塩漬けになってしまったというお話もよく伺います。
そのような場合の「仕切り直し」役にも開発設計会社が使えます。
シミュレータの使い方、結果の読み取り方、「次の一手の」考え方、などの様々なノウハウの伝授を受けることにより、諦めかけていた自社での理論に基づく、放熱設計、応力設計、筐体設計を手中にすることができます。
以下、ご参考に熱に関連する情報が記載されたリンクを列記しておきます。
- WTIの技術コンサルブランド「テクノシェルパ」による熱・応力に関するコンサル
- 熱応力クリニック
- 無料「熱反り計算ツール」のお問合せが増えています
- 積層板の簡易熱反り計算ツール
- 温度変化で発生する熱応力は、想像以上に大きい
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