今回は2端子対回路の中にキャパシタCを並列接続したときの反射損失と通過損失を求めます。
2端子対回路の中にキャパシタCを並列接続したときも
#089 EMI対策 ~ 並列素子のSパラメータ(インダクタ編)~ と同じように考えればよい。
この場合だとZpは、1/jωC (= -j/ωC)なのでS11とS21は以下のようになりますね。
なみりんよ、さっそくS11とS21の式をExcelの複素関数を使って計算するのじゃ。
① 最初に初期条件設定として、キャパシタCと特性インピーダンスZOを記述します。ここではCを10pF、ZOを50Ωにします。
② つぎに周波数fを記述し、角速度ω( =2 π f )[rad/s]を求めます。
③ さらに角速度ωとキャパシタCとの積でリアクタンスωCを求めます。
つぎはS11を求めるために複素関数を使ってみるのじゃ。
COMPLEX関数を使います。
④ S11の分子の実数はゼロ、虚数は -ωCZOになります。
⑤ S11とS21の分母の実数2、虚数はωCZOになります。虚数単位はjです。
つぎは
⑥ S11は、IMDIV関数を使って④の分子を⑤の分母で割って求めます。
⑦ IMABSを使って、絶対値|S11|に変換しました。
⑧ ⑦で求めた絶対値|S11|の対数をとり、20倍しました。
これが反射損失になります。
S11から反射損失が求まったようじゃな。
つぎはS21を求めてみるのじゃ。
S21は
⑨ COMPLEX関数を使って分子を記述します。IMDIV関数で前述の分子から分母で割るように記述します。
⑩ ⑨の結果からIMABSを使って、絶対値|S21|に変換しました。
⑪ ⑩で求めた絶対値|S21|の対数をとり、20倍します。
これが通過損失になります。
S21通過損失も求まったようじゃな。
横軸を周波数[MHz]にして、反射損失と通過損失をグラフ化してみるのじゃ。
反射損失と通過損失のグラフは下のようになります。
キャパシタ10pFを伝送線路上に並列接続すると通過損失は635MHzで約3dB減衰し、さらに周波数を高くするごとに減衰量が大きくなります。一方反射損失で見ると635MHzより高い周波数では入力反射量が大きくなっています(全反射)。これはローパスフィルタ(LPF)だわ。
よろしい。キャパシタの並列接続は、なみりんが示したLPFが理想動作になるが、これまでと同じように等価直列抵抗ESR、等価直列インダクタンスESL、等価並列抵抗EPRなるものが存在するため、理想特性にはならないのじゃ。
実際にどのような特性になるのか次回演習してみよう。