Wave Technology(WTI) | 半導体周辺回路とその応用製品の開発・設計会社

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#070 高周波 ~スミスチャートとは?(1)~

今回は高周波回路の設計や評価に欠かせないスミスチャートについて話してみよう。
なみりんはスミスチャートを知ってるかい?

うん。なんとなくわかるけど、細かいことがよくわかんないので
教えてください。よろしくお願いします。

そうじゃの。
高周波の回路を数式で解こうとすると、複素計算になってかなり面倒じゃ。スミスチャートはこういった複雑な複素計算を図表上で簡単に行うようグラフ化されたものじゃ。このスミスチャートを使うと高周波回路を考えるうえでとっても便利じゃ。

どんな風に便利なんですか?

それじゃあ、ごく簡単にスミスチャートの説明から始めよう。
スミスチャートの水平軸が複素反射係数の実数部、垂直軸は虚数部を表しておる。
インピーダンスの実部(抵抗)成分は周波数によらず一定なので各円上は等抵抗であることを表しており等抵抗円と言うのじゃ。
上下に曲がった円弧上はインピーダンスの虚部(リアクタンス)成分が一定なので等リアクタンス円と言うのじゃ。
また、円の上半円部分は誘導性(インダクタンス)成分で、下半円部分は容量性(キャパシタンス)成分を表しておる。
そして円の真ん中は普通”1”じゃ。特性インピーダンスZ0で正規化されておるのじゃ。

 
 
 
 

実際のインピーダンスを特性インピーダンスZ0で割ったものを正規化インピーダンスと言うのじゃ。特性インピーダンスとは、分布定数回路上を伝わっている電圧の波と電流の波の比として定義される。Z0は50Ωや75Ωが一般的じゃ。
大雑把なスミスチャートの説明は以上じゃ。

スミスチャートがどんなものなのか少しわかってきたけど、まだ何が便利なのかわかんないです。

慌てなさんな。
ここからもう少し具体的な使い方の説明をしよう。
まずは下の表のいくつかのインピーダンス(Z1~Z6)をZ0=50Ωで正規化したスミスチャートにプロットしてみよう。

 
 
 

あっ!これわかりますよ!

正規化インピーダンスz1~z4までは虚数部がゼロなので、すべて実軸上にプロットされますよね。
z1 オープン または開放は一番右端のここです。
z2 ショート または短絡は一番左端のここです。
z3 "1" は真ん中のここです。
z4 "2" はこの2の位置にプロットされます。
次にz5は実数部がゼロなので、一番外の円上-2.0jの交点 ここにプロットされます。
最後にz6は0.5の等抵抗円と+2.0jの等リアクタンス円の交点にプロットされます。

おお!なみりん 素晴らしい!全問正解じゃ。
もうひとつアドミッタンスチャートを説明しておこう。

アドミッタンスはインピーダンスの逆数であり、アドミッタンスもインピーダンス同様 実部と虚部を持った複素数じゃ。アドミッタンスの実部はコンダクタンスと呼ばれ、虚部はサセプタンスと呼ばれておる。いずれも単位はジーメンスじゃ。
アドミッタンスチャートはその名のとおりアドミッタンスをプロットするもので、スミスチャートを180度回転させたものなんじゃ。
アドミッタンスの実数部つまりコンダクタンス成分は周波数によらず一定なので各円上は等コンダクタンスであることを示しておる。等コンダクタンス円と言うのじゃ。
上下に曲がった円弧上はアドミッタンスの虚部つまりサセプタンス成分が一定なので等サセプタンス円と言うのじゃ。
こうしてアドミッタンスチャートができておる。
今回の説明はここまでにしておこうかのぉ。

 
 
 

はい。ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

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