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#065 EMI対策 ~伝送線路6(ダンピング抵抗2)~

前回に引き続き、ダンピング抵抗のお話です。

前回はドライバの出力側にダンピング抵抗Rd:56Ωを追加することで、レシーバ入力端のオーバーシュートを抑制できることを確認した。今回は、ダンピング抵抗Rd:56Ωを追加したことによるアンダーシュートの抑制をBergeron図で確認してみよう。

もともと1/ZOLの傾きに対して、ダンピング抵抗が加わったことで1/(ZOL+Rd:12.2+56=68.2Ω)の傾きになりました。

 

 

 

なみりん、ここから順番に説明しよう。
ステップ1
・Bargeron図(ステップ1)に示すように、ZOL+Rdに変更した線(水色の線)を引くのじゃ。
・次にZOHの線(橙色の線)上の3.3Vから特性インピーダンスの傾き-1/Zの線(紫色の線)を引いてみるのじゃ。マイクロストリップ線路の特性インピーダンスZは71.9 Ωじゃから、紫色の線と水色の線で交わる点の電圧1.61Vがa点の電圧になるのじゃ。(②)

ステップ2
・Bargeron図(ステップ2)に示すように、ステップ1の交点から+1/Zの線(緑色の線)を引いてみよう。
・ 緑色の延長線上にZi(I=0)の線と交わる点がある。この交点の電圧がb点の電圧になる。

 
 
 

Z:71.9Ω ≒ ZOL+Rd:68.2Ω なので、 水色の線と緑色の線はほぼ重っていますね。

そうなのじゃ。これが前回(#064 EMI対策 ~伝送線路6(ダンピング抵抗1)~)と同様に特性インピーダンスZに対して、出力インピーダンスZOLにダンピング抵抗Rdを追加したことで整合が取れた状態なのじゃよ。

さらにステップ3
・③の時点でb点の電圧が-0.09Vなのでグラフの目盛りをもっと細かくして見てみよう。
・Bargeron図(ステップ3)に示すように、③から-1/Zの線(桃色の線)を引いてみよう。

 
 
 

次にBergeron図から、時間経過と電圧の変化を表にまとめよう。
a点からb点までの到達時間Tは3.04nsで、立下り時間tfは1nsで 状態遷移することを前提に話そう。
・最初にa点は0nsから1nsの間で電圧が変化する。 (②)
・次に3.04ns経過から1nsの間でb点の電圧が変化する。 (③)
・6.08ns経過から1nsの間でa点の電圧が変化する。 (④)
上記の内容を横軸を時間、縦軸を電圧で表現したグラフが下の図じゃ。

 

 

 

レシーバ側(b点)のアンダーシュートが消えたわ。 ドライバ出力端にダンピング抵抗を追加したことでレシーバ入力端子のオーバーシュートだけじゃなくてアンダーシュートも同時に解決できたわけですね。

そうなのじゃ。 このシリーズかなり長くなったが、伝送線路上のオーバーシュートとアンダーシュートについて分かってもらえたかの?

はい、今回は、デジタル回路の分布定数と集中定数の境界をはじめ、 反射に伴うオーバーシュート・アンダーシュートの動作とダンピング抵抗の効果について長~い道のりでしたが1つ1つ学ぶことが出来ました。
昇平博士、ありがとうございました。

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