こんにちは。第二技術部 カスタム技術課の傳田(でんだ)です。
今回は車載用電子部品の信頼性試験規格についてお話しします。
WTIでは現在、「車載用電子部品規格準拠試験受託サービス」の立ち上げを進めています。これは、昨今増加傾向にあるAEC規格やAQG324規格に準拠した信頼性試験の需要に応えるための動きです。現在は、AEC-Q101のSSOP試験やAQG324のHTRB試験が実施できるよう、環境整備をしているところです。
環境整備にあたっては、弊社ブログ「計測評価プラットフォームの活用推進」について!でもご紹介している測定環境が使えそうです♪
私は電子部品の規格についてあまり詳しくなかったので、これを機に、車載用電子部品に適用される信頼性試験規格について調べてみました。
車載用電子部品に適用される信頼性試験規格
車載用電子部品の信頼性に関する規格では、次のようなものが有名です。世界中で様々な組織が各々の体系を構築して規格を策定しているようです。
表 1 信頼性試験規格の例
規格名称 | 説明 |
AEC |
アメリカの大手自動車メーカーが中心となって設立されたAEC(Automotive Electronics Council)により、車載電子部品の信頼性試験規格として策定された。 |
IEC |
IEC(International Electrotechnical Commission)が定める規格。 |
AQG324 | ヨーロッパのECPE(European Center for Power Electronics)により策定された規格。ドイツの自動車メーカーが開発した「LV324」に基づいて策定された。 |
JEITA | 電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association)によって、日本発の規格として策定された規格。 |
今回、信頼性試験規格について調べた中で、AEC規格は、元々が車載向けのため体系が分かりやすく、ドキュメントが無償で入手できるという点から、世界的に利用されていることも納得です。
信頼性試験規格準拠試験の例
AEC規格やAQG324規格は無償でドキュメントがダウンロードできるので、これを参考にいくつかの試験について内容を確認してみます。
以下に示すのは、デバイスの寿命に関する信頼性試験です。デバイスに熱的、電気的なストレスをかけることでデバイスの劣化を早めたうえで正常動作することを確認し、一定の寿命を保証します。
図 1 製品寿命に関する信頼性試験イメージ
- AEC規格における信頼性試験の例 (SSOP、HTRB)
【 SSOP試験 (Steady State Operating) 】
【 HTRB試験 (High Temperature Reverse Bias) 】
図 2 SSOP試験の概要※1
AEC-Q101に規定されているこれら2種の信頼性試験は、ディスクリート部品(特に、SSOP試験はツェナーダイオード)に適用されます。3ロット、77サンプルに対して、1000時間の試験が規定されています。試験方法は、MIL-STD-750※2の“メソッド1038”に基づくとのことです。
SSOPに関しては試験実績があり、こちらで掲載していますのでご覧ください。
⇒ 【WTIブログ】AEC準拠試験に「計測評価プラットフォーム」を活用♪
SSOP試験でネックになるのはデバイスの電流制御です。試験中、デバイスにかける負荷を一定に保つため、定電流回路で電流を制御します。WTIでは、ボードコンピュータを使用して複数回路を同時に制御する環境を整備しました。
図 3 SSOP試験のイメージ
※1 「FAILURE MECHANISM BASED STRESS TEST QUALIFICATION
FOR DISCRETE SEMICONDUCTORS IN AUTOMOTIVE APPLICATIONS」
p.12より引用
※2 軍事向け半導体デバイスの試験方法について規定されたアメリカの規格。こちらもネットで内容を確認することができます。
- lAQG324規格における信頼性試験の例 (HTRB、HTGB、H3TRB)
【 QL-05 HTRB試験 (High-temperature reverse bias) 】
【 QL-06 HTGB試験 (High-temperature gate bias) 】
【 QL-07 H3TRB試験 (High-humidity, High-temperature reverse bias) 】
図 4 AQG324規格におけるHTRB試験に関する説明の一部※3
AQG324に規定されているこれら3種の信頼性試験は、主にMOSFETやIGBTといった半導体製品に適用されます。(詳細な試験方法は「IEC 60747」や「IEC 60749」に準ずるとのことですが、IEC規格のドキュメントは有償のためご紹介は控えます。)
これらの試験でネックになりそうな点はリーク電流のモニタリングです。AQG324のQL-05 HTRB試験に関する説明では、次のような記述があります。
During this test, the collector-emitter leakage current ICE,leak or the drain-source leakage current IDS,leak must be recorded continuously.
「CE間もしくはDS間に流れるリーク電流を記録し続ける事がMust」と書いてあります。パワーMOSFETにおけるDS間リーク電流は、おそらく数十nA~数百µA程度かと思うので、汎用のマルチメーターでギリギリ測定可能かな?というレベルです。微小電流測定専用の計測器を使用すれば良いのですが、高価な計測器ですので数を用意するのは大変です。
WTIでは、“多チャンネルの微小電流測定システム”を準備しているのでこの試験に効率的に対応することができます。タイミングがあれば、また改めてご紹介します。
図 5 HTRB試験のイメージ
※3「Qualification of Power Modules for Use in Power Electronics Converter Units in Motor Vehicles」p.64より引用
- 調べた所感
車載用電子部品の信頼性試験の内容を確認しましたが、試験に必要なサンプル数が多く、さらにそれぞれ1000時間単位の試験時間がかかるということで、とても大変な試験であることが分かりました。また、規格によってはドキュメントの入手が有料であるなど、規格準拠試験のハードルは比較的高いように感じました。
外部委託したい気持ちが分かりました。
車載用電子部品 規格準拠試験受託サービスを準備中
信頼性試験の実施には、十分な人手と時間が必要ですが、昨今の人手不足でままならないという声も多いかと思います。
WTIの信頼性試験受託サービスが、お困りのみなさまの手助けになればと思います。現在サービス立ち上げの準備中ですので、ぜひ宜しくお願いします。
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