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高周波SSPAの回路設計手順について

みなさん、こんにちは。高周波機器設計課の番匠です。

当社では、パッケージ内部でインピーダンス整合を行う内部整合型トランジスタや外部でインピーダンス整合を行う外部整合型トランジスタ、高周波SSPAの開発実績があります。

高周波ディスクリートトランジスタ/高周波アンプモジュールについてはこちら

 

 

ところでSSPAって何かご存じですか?
SSPAは、Solid State Power Amplifierの略で、固体素子のトランジスタを用いてマイクロ波電力を増幅させる固体電力増幅器のことなのです。通信装置やレーダー装置、衛星機器などの電力増幅器として、このSSPAが広く使われていますが、今回そのSSPAのRF部分の設計手順についてご紹介させていただきます。

SSPAの回路設計の手順としては、大きく分けて下記の(1)~(4)と考えています。

(1)要求性能の確認
(2)部品選定
(3)ブロック図/レベルダイヤの作成
(4)回路設計

それぞれの内容について、簡単にご紹介します。

 

(1)要求性能の確認

お客さまの要求性能を確認することは言うまでもありませんが、手戻りが発生しないよう要求性能を漏れなく確認しておくことは、設計していく上でとても重要なことです。  

SSPAの主な要求性能の例を下記に挙げます。

  • 使用環境条件(温度、湿度、設置場所、輸送方法など)
  • 周波数帯域
  • 送信尖頭電力
  • 線形利得
  • 消費電力
  • 不要放射
  • 発振

 

(2)部品選定

要求性能を満たすことはもちろん重要ですが、目標コストも考慮しながら部品を選定していく必要があります。
SSPAの中で特にコストが高くなりがちな部品は、やはりトランジスタではないでしょうか。コストを抑えたい場合は、周波数帯域が低ければ整合回路を持たないトランジスタを選択することが多いです。

一方、周波数帯域が高い場合は、外部に整合回路を設計するのは容易ではないので、整合回路を内蔵しているトランジスタを選択することになります。
この場合、設計も容易で性能ばらつきも小さくなりますが、コストが高くなることと周波数範囲が限定されるため、特定の周波数帯でしか使用できないデメリットがあります。

また、部品の入手性や生産継続性について把握しておくことも重要なポイントになりますね。

 

(3)ブロック図/レベルダイヤの作成

部品が決まったら、要求仕様を満たすためにどのような部品をどのように配置していくか決めます。SSPAの簡単なブロック図の例を図1に示します。

SSPAを複数合成して使用する場合は、図1のようにPhase Shifterを搭載してSSPA間の位相を揃えることで、RF出力電力の合成損を抑制します。また、外部負荷による影響について要求がある場合は、その影響を軽減するためにCirculatorをSSPA内に搭載することもあります。

ブロック図が決まれば、各部品を接続するための回路基板の損失や部品の利得を積み上げて表にしたレベルダイヤを作成し、性能達成の見通しを立てます。

 

図1 ブロック図の例

 

表1 レベルダイヤの例

 

(4)回路設計

要求性能の確認、部品選定、レベルダイヤの作成が完了すれば回路設計に移ります。

ここでは選定した部品のSパラメータが必要となります。部品がトランジスタの場合は、更に大信号モデルも必要となります。これらについては、各メーカーのWebページで入手できることがありますが、無い場合もあります。
その際は、Sパラメータを測定したり大信号パラメータを抽出したりしてモデルを作成する必要があります。

回路設計では複雑な計算を必要とするため、一般的に2次元回路シミュレータを使用します。回路構成がある程度決まれば、寄生成分や複雑な電磁界のカップリングなどの影響を計算できる3次元回路シミュレータで回路の解析/修正(カットアンドトライ)を繰り返し、パターン形状やレイアウトの最適化を行います。

 

いかがでしたでしょうか?

簡単ではありますが、高周波SSPAの設計手順の例についてご紹介しました。

当社には、各種高周波部品を含めた高周波回路設計や無線機器開発に精通したエンジニアが豊富に在籍していますので、お困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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