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ビヘイビアで簡単Spiceシミュレーション②

みなさんこんにちは。電源課の真野です。

以前に掲載した「回路シミュレーションで手っ取り早く傾向をつかみたいときは、ビヘイビアモデルを使ってみては?」という話の続きをしたいと思います。

前回は元となるPWM信号まで作りましたので、今回は実際の動作に必要なデッドタイムの追加と、作成した信号でインバータ回路をドライブしてみたいと思います。

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(2)デッドタイムの付加

ハイサイドとローサイドのFETをドライブする信号について、ハイサイド側は先に作成したPWM信号をそのまま使い、ローサイド側はその信号を単純に反転させて作っても良いように思いますが、実際のデバイスではハイサイドとローサイドのFETが同時にONしないように、デッドタイムという両方のFETがOFFになる緩衝期間を設ける必要があります。

 

【図6】デッドタイム

 

先に作成したPWM信号(PWM)から、デッドタイムを追加したハイサイド用素子のドライブ信号(HS_DRV)、ローサイド用素子のドライブ信号(LS_DRV)を作ります。

まず、下図のようにデッドタイム分の遅延を持った信号(DLY)を作り、その2つの信号のANDを取ったものがハイサイドFETのドライブ信号(HS_DRV)に、NORを取ったものがローサイドFETのドライブ信号(LS_DRV)になります。

 

【図7】デッドタイムを持った2つの信号を作る方法

 

PWM信号(PWM)から、一定時間遅延した信号(DLY)を作り出すのは、ビヘイビア電圧源Bを使用するか(図8)、ディジタルモデルの中のバッファーモデルなどに遅延を持たせて作ります(図9)。

ここではデッドタイム(DT)を.paramコマンドで変更できるようにしています。
また、ノード名をDLYとしています。

 

 

ANDとNORは、LTspiceにあるディジタルモデルANDとOR(のNOT出力)を使用します。

 

【図10】ANDとNORでデッドタイムを持った信号を作る

 

ここまで紹介したモデルを組み合わせて、インバータ回路用のFETドライブ信号を作成したものが下記になります。

ハイサイドFETのドライブ信号(HS_DRV)と、ローサイドFETのドライブ信号(LS_DRV)がデッドタイム分開けて交互にHiになっているのが分かると思います。

 

【図11】FETドライブ信号

 

(3)インバータ回路に使ってみる

出来上がった、信号(HS_DRVとLS_DRV)をインバータ回路に使用してみます。

作った信号(HS_DRVとLS_DRV)は汎用性を持たせるためGNDを基準としており、出力電圧も考慮していませんので、回路への適用にあたり、もう一段ビヘイビア電圧源B(B_HSDRV、B_LSDRV)を介して、GNDと切り離し、ゲート電圧(VGS_HI、VGS_LO)も変更できるようにしています。

ドライバ回路の立ち上がり/下がり時間、LCR(IBISモデルがあれば尚良し)で作ったインピーダンスを付加すればさらに実際に近い検証ができるものと思います。

 

【図12】FETドライブ信号を実際の回路に適用した例

 

シミュレーションは使用するモデルの精度で結果が大きく変わります。

想定していた結果と違う場合は、実際の回路でもそうなのか、モデルが悪いのかの切り分けが必要になってきます。
そうした場合、自分で作って内容を把握しているごく単純なビヘイビアモデルに入れ替えて確認してみるのが良い方法だと思います。

現在では差別化のため各ツール独自のモデルが多くあります。
互換性を考えると躊躇しますが、なかなか便利でついつい使ってしまいます。
今回のように傾向の確認に使う分には積極的に活用して見てはいかがでしょうか。

 

Wave Technology(WTI)電源設計課では、スイッチング電源の設計のご依頼にお応えすると共に、上記のようなシミュレーション評価も行っております。その他WTIでは、各種シミュレーション、ノイズ対策、またリバースエンジニアリング、カスタム計測、機構設計など電源以外のことや電気回路設計以外でも幅広い知識と経験を有しております。何かお困りのことや『こんなことができないの?』 などのご要望がありましたらまずはお気軽にご相談下さい。

 

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