こんにちは、システム設計課ソフトウェア設計ユニットの松嶋です。
昭和の時代から平成、令和とずっと半導体エンジニア一筋でしたがアナログの経歴が長いので、ソフトウェア、ましてやマイコンは全くのずぶの素人(笑)。アラフィフからのソフトウェア開発は大変ですが頑張っております。
先日、Infineon社 マイコンチップAURIXTMの評価ボードを購入いたしました。
今回はこれを使ったLIN(Local Interconnect Network)通信を試してみましたので、お話しさせていただきます。 (当社のソフトウェア開発受託サービスはコチラ)
1. AURIXTMとは
AURIX™はドイツInfineon社が販売しているマイコンチップで、主に自動車などをターゲットにしているマイコンシリーズです。私はマイコンといえばZ80くらいしか知らないおっさんですが、この仕事に携わり30年のエレクトロニクス進化に驚愕しています。
簡単に言えば、コア数は最大6コアで300MHz動作、PLL、RAM、FLASHメモリ、DMAコントローラなどの基本はもちろん、デルタシグマなど2種類のAD変換、車載通信の基本であるCAN、FlexRay、I2C、QSPI、Gigabitイーサなどの主要通信規格、SD/eMMC、レーダーインターフェースにも対応し、機能安全も最高レベルであるASIL-D対応、さらに高度なセキュリティーを保証するHSM(Hardware Security Module)搭載と、まさに考えられる中で全ての自動車に必要な機能をサポートしており、これは他のマイコンベンダよりも一歩先行するレベルです。
現在AURIXTMマイコンはすでに第二世代が主流となっており、間もなく第三世代の話もちらほらと出ています。
日本国内では巨人ルネサスのマイコンがその使いやすさと豊富なツール、手厚いサポート体制によりその牙城をなかなか切り崩せなかったのですが、これらの先進性が注目され徐々に採用する自動車関連メーカーも増えております。
しかし書籍などの参考書や資料の少なさから、なかなかハードルが高いというのも事実です。
2. LINとは
近年、自動車の安全性、利便性向上、環境規制対応に伴い、電子制御部品が増加していることは皆さんご存知かと思います。
自動車の利便性向上のため組み込まれる電子装備は増える一方
また欧州、中国をはじめ世界各国でのガソリン車の段階的な廃止方針に伴うEV化の流れから、ドライブトレイン系の制御用途も含めて今後ますます電子制御化の需要が高まることは必然です。
自動車の電子制御化はますます進む
しかし、制御する機器が多くなればなるほど、配線が増えて部品数も多くなり、車の価格もどんどん高くなります。その問題の解決のために策定された規格の一つがLINです。
増え続ける配線、スペース、コストをLINで解決!
3. LINハードウェア
LINノードはマイコンとLINトランシーバによって構成されています。インターフェースの基本はRS-232C≒UARTです。
ちなみに、UARTを用いた通信と言えば、パソコンとモデムを用いたパソコン通信や楽器同士を接続するMIDI規格などが、アラフィフ、アラシックス世代にはおなじみではないでしょうか? YMO世代の私も、学生時代はMacintoshとヤマハDX7、コルグM1などのシンセサイザーを使ってDTMなどに親しんだものです。
ということでUARTは、パソコンの黎明期である1980年代から存在している汎用規格であり、枯れた規格とも言えますが、その分簡単かつ安価でハードを構成できます。
LIN通信は8bit Dataの前後にStart bitとStop bitを付与した10bit単位で行います。また、一般的なロジックではHighレベルがアクティブ状態ですが、LINではLowがアクティブ状態です。これをドミナントといいます。逆にIdle状態はHighです。これをリセッシブといいます。
LIN通信の速度は2.4k~20kbit/sで、現在ほぼ全ての自動車に採用されているもう一つの通信規格CAN(Controller Area Network)と比較すると、「比較的低速」です。また「専用の通信コントローラが不要」で「シングルワイヤ配線」なのでハードウェアコストを抑えることができます。
4. 通信方式概要
LIN通信はマスター・スレーブ方式を採用しています。言葉の通り、指令塔であるマスターが指令を出し、スレーブ(自動車であればパワーウィンドウやドアミラーなど)がその命令を実行するという形式です。
先生が生徒に勉強を教えたり指示したりしていると考えるとわかりやすいですね。
それではいよいよAURIX™評価ボードを使ったLIN通信確認ですが、スペースの都合で今回はここまでです。
次回をお楽しみに。
弊社では車載用通信プロトコルLINを含め、常に車載エレクトロニクスの最新情報をキャッチアップして、お客様に最適なソリューションを提供するため邁進しております。車載エレクトロニクス開発案件等でご興味をお持ちなら是非弊社の「ソフトウェア設計受託サービス」まで、お問い合わせ頂けると幸いです。
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