みなさんこんにちは。技術教育センター長の前川(まえがわ)です。
昨年 4月に新入社員が入社して元気に新人研修を受けてくれています。その研修講座の一つに私が教えている電磁気学があり、前回のブログに引き続きその講座でのエピソードをご紹介します。
このブログでは、当社メインキャラクターの「なみりん」(当社へ入社志望の女の子)と、イッくんとのインタビュー形式でお送りします。(イッくんは下名のニックネームです(イクセイ))
■なみりん: 話題のSDGs(持続可能な開発目標)で注目されている電気自動車の要となるモーターや発電機について、電磁気学講座で実験したと聞いたけどどんな実験ですか?
■イッくん: 化石燃料を燃焼させるエンジンは二酸化炭素を排出するので、それに代わる電気モーターが脚光を浴びていますね。モーターは小学校などで模型の実験をしたと思いますが、電磁気学講座の中で改めてその動作原理を学習しました。原理は、図1のように固定磁石による磁界の中にコイルを置き、それに電流を流すと電磁力によりコイルが回転するというものです。
これとは逆にコイルに電流を流さずに回転させると、コイルに起電力が発生して電気を生み出します。発電所などではこの発電機を使っていますし、身近なところでは自転車のライトがこの原理で発電しています。
■なみりん: 小学校の理科で実験したことを思い出すわ。くるくる回転したのが不思議だった。講座ではどんな実験をしたの?
■イッくん: 講座では、モーターの簡単な模型を使って、モーター回転と発電の両方を実験しました。モーターではコイルに直流を流すと回転し、その電圧を上げると回転が速くなりました。発電では、手でコイルを回転させ、その出力電圧をオシロスコープで観察しました。すると、図2の写真のように三角関数の絶対値のような電圧波形が得られ、これはファラデーの法則を基にした次の発電機理論式を見事に表しています。
(V:起電力、Φ:磁束、t:時間、Em:最大電圧、ω:回転角速度、t:時間)
三角関数になるのは、コイルが切る磁束変化がコイル角度の三角関数になるからであり、オシロの波形がその絶対値になるのは、コイルに整流子が付いており正負でコイル電流の向きが切り替わることで全波整流されるからです。
■なみりん: へえ~、式のとおりに発電するのね。発電機の原理を身近に感じるわ。
■イッくん: このような電界と磁界の相互作用は、モーターではフレミングの左手の法則やローレンツ力で、発電機ではフレミングの右手の法則やファラデーの電磁誘導の法則で説明されますが、根本的な法則はどちらもローレンツ力で考えることができます(導線が静止して磁界が変動する場合以外)。ローレンツ力F(ベクトル)は、電荷素量をe、磁束密度をB(磁界の強さHに透磁率μをかけたベクトル)、コイルの速度をvとすると次の式で表されます。
F = e・ ( v x B ) ( v x Bはベクトルの外積) (2)
つまり、電子が磁束密度B の中を速度vで運動するとv と Bの方向からの外積の方向に、|v|と|B|の掛け算の大きさで力を受けるという法則で、方向は図3のとおりです。モーターではコイル線中の電子が電流で運動するため磁界によりこのローレンツ力を受けて回転力が生まれます。また、発電機ではコイル線の電子がコイル回転により運動するのでコイル線中でローレンツ力を受け移動することにより起電力が生じるのです。前述の起電力Vの理論式(1)もこのローレンツ力で書き直せます。
■なみりん: ローレンツ力ですか? 電磁気学ではいろんな法則が次々と出てきて、わけがわからなくなるので難しく感じるわ。 何かよい方法はありますか?
■イッくん:そうですよね、力学だとニュートンの法則だけで多くの運動が説明できますが、電気ではクーロン力に始まり、ガウス、アンペア、フレミング、レンツ、ファラデー、ローレンツ、マクスウェルなどと多くの天才が発見した力や法則が出てきて、覚えるのが大変だし混乱しますよね。実は、それらの中の基本法則であるガウスの法則とアンペア、ファラデーの法則を集約したのがマクスウェルの4つの方程式であり、力についてはローレンツ力に整理できると言われています。モーターと発電機では電界と磁界の相互作用が働くので多くの法則がでてきますが、両者を統一的に理解するにはローレンツ力が便利であり、それを使って回転力や起電力の向きや大きさを求めることができます。電圧と電流は電子の動きで決まりますのでローレンツ力のように電子に働く力を考えることが基礎になるということだと思います。(図3は電子ではなく正電荷で表示)
■なみりん: なるほど、この実験で基礎理論は実はとても役に立つことがわかりました。自転車に乗りライトを点け、電子の気持ちになってローレンツ力を体感してみます~♪
最後までお読みいただきありがとうございました。では、次回をお楽しみに。
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