みなさん、こんにちは。第一技術部、基板設計課の杉井です。
前回のブログでは電流源のダイポールアンテナの特性を説明いたしました。(当社の無線通信モジュール用アンテナ設計・評価受託サービスはコチラ、基板レイアウト設計受託サービスはコチラ)
今回は磁流アンテナの一種であるマイクロストリップアンテナについて紹介します。磁流アンテナの特性は、磁荷の流れ(磁流)という仮想概念を用いて求めることができます。
電流源アンテナでは、微小ダイポールアンテナを基にして、その電磁界からアンテナ特性を求めました。一方、磁流アンテナは微小ループが基本となります。磁荷と磁気双極子、磁気モーメントを仮定し、微小ダイポールの電磁界に対応させることで、微小ループの電磁界を求めることができます。磁気双極子と電気双極子の対応を図 1に、微小ループの電磁界を式1に示します。
図 1. 磁気双極子と電気双極子
式(1)の微小ループの電磁界は、微小ダイポールの電磁界の式をEθ → Hθ 、Hφ → -Eφ、μ → ε、ε → μ、p → mと置き換えたものです。また、このEφから、n回巻きの微小ループの放射電力、放射抵抗は、それぞれ、
と導出できます。
微小ループと微小ダイポールの比較を図 2に、微小ループの特徴を表 1に示します。図 2から、E面電界指向性とH面電界指向性が逆転していることがわかります。
図 2. 微小ループと微小ダイポールの放射電磁界の比較
表 1. 微小ループの特徴
ところで、図 3のようにマイクロストリップ線路に給電すると、マイクロストリップ線路は磁流アンテナとなり、両端において、電流はゼロに、電圧は最大になります。もれ電界によって電磁界を放射しますが、その量はわずかです。
図 3. マイクロストリップ線路
そこで、マイクロストリップ線路の幅を広げパッチ状(方形)にし、両端からのもれ電界を大きくしたのがマイクロストリップアンテナです。放射電磁界は図 4のようになり、頂点が最大利得方向となります[1]。
図 4. マイクロストリップアンテナの放射電磁界
マイクロストリップアンテナでは、給電点の位置でインピーダンス整合をとることができます。設計周波数2 GHz、PTFE基板CGP-500(チューコーフロー、比誘電率2.6)、厚みを1.6 mmとして計算してみる[2]と、アンテナのサイズは幅58.86 mm、長さは44.86 mmとなり、入力インピーダンスが50 Ωとなる給電点は、中心から5.52 mmだけ離れた箇所となります。
今回は磁流アンテナについて紹介しました。マイクロストリップ線路はアンテナとして活用できます。原理原則を理解し、設計できる技術者になれるよう引き続き、勉強していきたいと思います。
【参考文献】
[1] 三輪進・加来信之(1999).アンテナおよび電波伝搬 東京電機大学出版局
[2] http://www.takuichi.net/hobby/edu/em/antenna/patch/rect/index.html
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