みなさん、こんにちは。第一技術部、基板設計課の杉井です。
前回は社内で実施されている社内技術講座「小型アンテナの理論と設計」の概要について紹介させていただきました。(当社の無線通信モジュール用アンテナ設計・評価受託サービスはコチラ、基板レイアウト設計受託サービスはコチラ)
今回はもう少し詳しく、アンテナの基礎理論・特性について紹介いたします。
アンテナを大きく分類すると、表 1のようになります。
表 1 アンテナの種類
今回はアンテナの中で一番構造が簡易な、電流源の線条アンテナの基本である半波長ダイポールアンテナについて説明します。半波長ダイポールアンテナは、線条アンテナの中でも「アンテナの長さが波長の半分」のものであり、線条アンテナの特性は微小ダイポールの電磁界から求めます。微小ダイポールは、特性が悪く実用には向きませんが、全ての線条アンテナの基礎となるものです[1]。線条アンテナ全体に電流Iを流したとき、微小ダイポールにも電流Iが流れます。その結果、図 1のように両端に電荷が蓄積されます。
図 1 線条アンテナと微小ダイポール
この微小ダイポールの電流Iが周囲に作る電磁界をマクスウェル方程式から求めると、図 2のようになります。
図 2 微小ダイポールが生じる電磁界[1]
微小ダイポールが生じる電磁界は、距離Rと角度θ,φを用いて極座標で示しています。この電磁界から表 2のアンテナ特性が求まります(表 2 中の式の導出は割愛します)。
表 2 電流源のダイポールアンテナの特性[1]
アンテナに接続する部分の基板設計では、配線とアンテナのインピーダンス整合を行うことが重要です。アンテナの入力インピーダンスは起電力法で求めることができます。起電力法の計算手順は、最初に、線条アンテナの(仮想の)電流分布が作る電界を計算して、その電流と電界を生じるような起電力を逆算します。そして、起電力を電流の2乗で割ることでインピーダンスを求めます[1]。計算式は割愛しますが、半波長ダイポールアンテナの入力インピーダンスはZ=73[Ω]となります。つまり、インピーダンスを整合するには、半波長ダイポールアンテナに接続する配線のインピーダンスをこのZの値に合わせる必要があります。ちなみに、半波長ダイポールアンテナは内角によって入力インピーダンスが変わり、内角が120°のときに入力インピーダンスが50Ωになります。Z=50Ωだと、50Ωの同軸ケーブルを接続して使用することができます。
図 3 内角ごとの入力インピーダンス
今回は線条アンテナの特性について紹介しました。大学や新人研修で学んだ電磁気学では、電磁波がどのように空間を伝わっていくかまででしたが、そこからさらに一歩踏み込んで、アンテナの特性や設計について学ぶことができたので、今後の業務に役立てていきたいと思います。
【参考文献】
[1] 三輪進・加来信之(1999).アンテナおよび電波伝搬 東京電機大学出版局
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