みなさんこんにちは。システム設計課の寺藤です。
みなさんが信号波形を観測する際、多くの場合はオシロスコープを使用されると思います。今日はそのオシロスコープで見ている波形は本当に正しいのか?ということについてお話しします。
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まず始めにオシロスコープ本体についてです。
オシロスコープは今ではデジタルオシロスコープが標準ですが、その昔、アナログオシロスコープが普通でデジタルオシロスコープが出始めの頃は、サンプリング周期が長いため時間の短いグリッチ(望ましくない瞬時的パルス)はサンプリングの間に挟まれて見えないことがありました。そのためデジタルオシロスコープを信じないでアナログオシロスコープだけを使う技術者が結構いました。
今のデジタルオシロスコープは、サンプリング周波数がGHzオーダーであるものが普通で、トリガ性能が高く、グリッチの検出機能も有るため、昔のようにグリッチを見逃すことは起きないと思います。しかし、簡易的なPC接続のオシロスコープは単純な構造で、サンプリング周期が長いものがあるので気を付けなければいけません。
本格的/簡易的の別を問わず、オシロスコープの仕様をよく確認して、“何を測定するのか?”それに対して“使用している機器の性能は適切であるのか?”をよく吟味することが必要です。
次に一般的なパッシブプローブについてお話しします。
一般的なパッシブプローブはプローブの周波数特性を調整できるようになっています。
右図のようにプローブのコネクタ付近に調整用のトリマコンデンサが付いています。このコンデンサを調整してプローブの周波数特性を調整します。
この調整を行って周波数特性を平坦にしないと以下のように同じ波形でも見え方が異なってしまいます。
その他には、反射の影響もあります。
高速信号でなくても、電気信号は基板上で(基板の材質、板厚、配線サイズなど条件にもよりますが)大きめに見積もって1ns/15cm程度遅れます。
短い配線の場合は伝送信号と反射信号の時間差が少ないのでオーバーシュート、アンダーシュートの形で反射の影響が現れる程度ですが、長い配線の場合は同じ線上でも、信号の送端(ドライブする側)で見る波形と受端(信号を受ける側)で見る波形とでは異なって見えます。
例えば10nsの遅れがある線路で、10ns以下のtr/tfの波形を観察すると、遅延して伝搬する反射波で以下のように異なってしまいます。
最後に、オシロスコープのGNDの接続のしかたです。
これも特にデジタル信号で顕著です。デジタル信号はその角ばった波形の部分に高調波を沢山含んでいるのでGND線の状態によっては、低い周波数成分だけが丸まった波形として見え、角ばった部分(高周波)が減衰して見えてしまいます。つまりGNDの接続方法で正しい波形が見えていないケースがあるのです。
以下の3とおりのGND接続のしかたで波形がすべて違って見えます。
この場合③が最も実際波形に近く②、①の順になります。
① プローブのGND線(ミノムシクリップ)を基板のGND端子(テストピン)に接続した場合
② プローブのGND線(ミノムシクリップ)を観測信号の近くのGNDに接続した場合
③ プローブのGND線を使わず、下記の写真の様な付属品(アーススプリング)を使って近くのGNDに接続した場合
オシロスコープの付属品(アーススプリング)
WTIではオシロスコープの使い方を正しく理解した技術者たちが適切な測定方法を用いて、お客様に満足いただける製品評価を行っております。その他、デジタル、アナログ、高周波、電源設計、パターン設計など様々な設計・評価が可能な技術者がおりますので、お困りごと、ご相談ごとなどあればお問い合わせください。
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