こんにちは。第二技術部 カスタム技術課の傳田(でんだ)です。
以前、お仕事で微小電流測定器を作成しました。微小電流測定にも様々な方法がありますが、今回使用したのは“フィードバック方式”とよばれる測定方法です。今回はこの方式の基本的な回路についてご紹介します。
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ここでいう「微小電流」は、一般的なDMM(デジタルマルチメータ)で測定できない程度の電流を指しています。DMMでは「µA(10-6)」くらいまでは測定できるので、さらに小さい単位である「nA(10-9)」、「pA(10-12)」の電流を、ここでは「微小電流」として扱います。
◆ 微小電流測定器の目標性能
製作した微小電流測定器は、次の条件を満たすことが目標でした。
- 100 pA程度の微小電流が測定できる
- できるだけ高速に動作する(応答時間が10数ms)
応答時間については、市販の微小電流計(ピコアンメータなど)より高速を目指します。
◆ 微小電流測定の基本原理
製作した微小電流測定器は、フィードバック方式とよばれる測定方法で実装しました(図1)。
この回路によって、測定が困難な微小電流を一般的な電圧に変換し、簡単に測定できるようにしています。
図 1 フィードバック方式の電流測定回路
◆ 測定レンジの決定
どの程度小さな電流まで測定できるのかは、フィードバック抵抗の抵抗値によって決まります。
今回は抵抗値を1 GΩにすることで100 pA程度の電流まで測定できるようにしました。抵抗値が大きいほど、微小な電流を測定できるようになります。
図 2 測定レンジの決定
◆ OPアンプの選定
より微小な電流に対応するには、アンプ素子の性能も重要になります。例えば図3のように、10 nAの電流を測定したいのに、OPアンプの入力バイアス電流が1 nAとすると、10 %の誤差ということになってしまいます。OPアンプの入力バイアス電流が“そこそこ”小さくても、測定対象の電流値次第では大きな誤差を生む原因になります。
図 3 OPアンプの入力バイアス電流の影響
◆ 位相補償コンデンサ
フィードバック抵抗の抵抗値を大きくすればするほど、より微小な電流を測定できますが、回路が発振しやすくなってしまいます。発振を防ぐために、位相補償コンデンサCfを使用します。
このコンデンサの容量は、大きいほど発振しにくくなりますが、その分、応答時間が大幅に増加します。
製作した微小電流測定器では、2 pFのコンデンサを使用しています。今回の微小電流測定器の目標性能には応答時間の制約があり、あまり容量が大きいコンデンサは使用できませんでした。そのため、発振が少し心配な回路になってしまっていますが、後段に大きな容量負荷が接続されない限り問題ないとは思います。
図 4 位相補償コンデンサCf
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以上の回路が微小電流測定器の基本回路です。この回路に絶縁素子やフィルタ回路を付け加えて、完成となりました。完成した微小電流測定器の性能は次のようになりました。
ということで、目標の性能を満たすことができました。
◆ おわりに
今回は微小電流測定の基本回路についてご紹介しました。
それぞれサラっと書きましたが、実はこの測定器を製作するうえでたくさんのノウハウが使われています。
それについては、またの機会にお話しできればと思います。
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