こんにちは、パワーデバイス設計課の中本です。
よろしくお願いします。
2021年の3月11日で東日本大震災からちょうど10年の節目を迎えますが、2月13日に大きな地震が同様の場所で発生しました。専門家のインタビューで東日本大震災の余震であるとのコメントを聞きました。防災セットやポータブル電源を備えていた方、お風呂の水を貯めた方、その他10年前の教訓を生かして行動された方も多くいたようで、被災地の方の危機管理意識の高さに感心しました。
さて本題です。前回のブログではパワー半導体の評価に使用するオシロスコープの基礎知識について書かせていただきました。今回はパワエレ分野で使うシャント抵抗について書こうと思います。シャント抵抗って何?と思われる方も多いと思いますので、まずはシャント抵抗について説明します。
【シャント抵抗とは?】
広義ではシャント(Shunt)とは「分流する」という意味があり、分流用途として電流計に並列に入れる抵抗器のことを言っており、パワーエレクトロニクスでは回路電流を検出するための抵抗器のことを言います。
電流検出は図1のようにシャント抵抗を回路へ直列接続し、オームの法則を利用して電流-電圧変換を行います。この方法を利用して、通電中の回路電流をモニタすることで、過電流保護を行うことが可能となります。
図1 回路電流検出
シャント抵抗のカタログ値に抵抗温度係数という項目があります。抵抗温度係数とは温度が1.0℃変化した時の抵抗値変化の割合を意味します。
例えばカタログの抵抗温度係数が100 ppm/℃の抵抗器では、1.0 ℃の温度変化で0.01 %の抵抗値が変化します。温度が100 ℃変化すると抵抗値は1%変動します。
図2に示すように1mΩのシャント抵抗(抵抗温度係数:100 ppm/℃)であれば、ΔTが100 ℃の変化で抵抗値が1.01 mΩになるといった考えです。
図2 シャント抵抗1 mΩの温度特性(抵抗温度係数:100 ppm/℃)
回路設計後の評価において、
- 想定どおりに動作しない!
- 計算どおりの電流値、電圧値にならない!
そんな時は周辺部品を確認しますよね?抵抗器の場合であれば、抵抗温度係数は各温度でカタログどおりのスペックが得られているでしょうか?
変動が小さい特性だけどなんとか確認したい。それが抵抗器とは違った部品の場合もあるかもしれませんが、そんな経験はなかったでしょうか?もし、確認する必要がある場合には、その変動が小さな特性をスペック以上の桁数で測定する必要があります。
今回は抵抗温度係数を確認するために高精度アンプや演算回路を組み合わせた計測システムを作ってみました。図3にその計測システムのブロック図を示します。
計測システムは用途に合わせた電流(数アンペア~数百アンペア)を流した状態で抵抗値を測定できるような構成にしました。
図3 計測システム
気になる測定精度ですが、ある一定の温度条件下において、通電したときに抵抗値の測定精度が0.02 %程度のばらつきに落ち着きました。100 ppm/℃の抵抗器を10 ℃単位で測定できる計測システムができました。
この計測システムの開発では、抵抗器の1つのパラメータを検証するにしても、高精度の測定が必要になりますし、それを実使用状態でとなると、市販の計測器はなさそうで、頭をひねる、知恵を絞ることになり、少し苦労しました。
今回のブログでは、抵抗値評価の高精度測定について、当社のソリューションを例に挙げてご紹介させていただきました。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
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