みなさん、こんにちは。
株式会社 Wave Technology 第一技術部システム設計課の竹内です。
今回のテーマは・・・、
市販/外注アンテナの性能が出にくいのはなぜ?
です。
自社設計した基板に市販品もしくは外注設計したアンテナを実装したが、アンテナのデータシートどおりに共振周波数やアンテナ利得を得られなかったという経験はありませんか?
何故、そういった事が起こるかをお話ししたいと思います。
※基板に実装するモノポールアンテナを想定してお話しします。
なぜ、データシートどおりの性能が出ないの?
結論からいうと、アンテナ評価の際に使用する基板のグランド面積が異なるからです。
以前のブログ「LTEの各Bandに必要なグランド面積とは?(モノポールアンテナの放射効率)」でお話ししたとおり、モノポールアンテナはグランド部分も含めてアンテナとして機能するため、グランド面積や形状によってアンテナ特性が変化してしまいます。
市販アンテナのデータシートには、アンテナ利得や放射効率を測定した際の評価基板のグランドや基板外形の寸法が記載されています。
実はデータシートに記載されているアンテナ特性は、あくまでも「データシートに記載された基板で評価したときの性能」でしかありません。
また、外注設計されたアンテナについても同様に、評価時に使用した基板と実際にアンテナを搭載する基板のグランド面積や形状が異なると、想定していた性能が出ないといったことが起こりえます。
設計値/データシートどおりの性能を確保するには?
では、こういったことを未然に防ぐにはどうすれば良いでしょうか?
WTIでアンテナ設計をする際の事例をもとにお話しします。
お客様からはアンテナ設計を含んだ回路設計~基板設計~試作/評価をご依頼されることがよくあります。
アンテナの設計から試作までの大まかな開発の流れは図1のとおりです。
図1 設計から試作までの一例
この中で、なぜ「アンテナ再設計」の工程があるのかというと、「基板設計」において部品配置や配線設計によってグランド形状が変化するため、基板設計が進まないと基板のグランド面積や形状が確定しないからです。
そのため、基板設計を始める前の「アンテナ設計」の工程では、グランド形状は仮の形状で設計するしかありません。この段階では、「基板設計」後のアンテナ特性は分かりません。
そこで、WTIでは基板設計段階で部品配置やパターンレイアウトが決まり、グランドの形状がみえてきた段階で、グランド形状を置き換えてアンテナのエレメント長や形状の再調整を実施しています。そうすることで、アンテナ設計の解析結果と試作後の評価結果との特性差を小さくしています。
では実際に、WTIで設計したGPS用アンテナ(共振周波数:1575.42 MHz)の入力反射特性の違いを見ていきましょう(図2)。グラフには次の3条件の解析結果を載せています。
①基板設計前のグランド(形状a)で設計したアンテナ(形状A)
②基板設計後のグランド(形状b)に形状Aのアンテナを実装
③基板設計後のグランド(形状b)でエレメント調整したアンテナ(形状B)
図2 アンテナの入力反射特性
図2のとおり、①と②では共振周波数が約65 MHzもシフトしていることがわかります。そこで、③のエレメント調整後のアンテナでは、①と同じ共振周波数の1575.42 MHzに合わせ込めています。
このように、アンテナ設計を含んだ回路設計では、設計の進捗にあわせてこまめにアンテナの調整・再設計を行うことが、設計値やデータシートの性能を確保するための重要ポイントとなります。
また、ここでは詳細は割愛しますが
基板を収める筐体の素材、アンテナ周辺のネジや電池などの金属部品の影響によってもアンテナ特性は変化してしまいます。
そのため、機構部品の素材情報や3D形状データを取り込んで、アンテナ設計をする必要があります。
アンテナのシミュレーション解析サービス(アンテナでお困りの際は・・・。)
シミュレーションによる下記のような解析も行っておりますので、お困りの際はお問い合わせください。
① 使用するモノポールアンテナに必要なグランドサイズが知りたい。
② 思ったほど通信距離が得られない。グランドサイズによるものなのか切り分けたい。
③ アンテナ搭載位置に問題がないか試作品を作る前に確認したい。
④ 設計した複数のアンテナについて、シミュレーション比較したい。
最後に
WTIではアンテナ設計だけでなく、基板設計、機構設計も一括で承ることができますので、前述のようなアンテナ特性の共振周波数シフトなどを事前に把握してアンテナ設計に落とし込むことが可能です。
アンテナ設計の外部委託をご検討の際は、基板設計と機構設計までを含めてご相談ください。
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