みなさん、はじめまして。第二技術部 電源設計課 電源設計第一ユニットの島村です。
現在、Li-ionバッテリに充電する充電器の開発業務を行っています。
今回はこの充電器の出力端子に外部から印加されるノイズ電圧に対する耐性の話をします。
この充電器にはLi-ionバッテリの他にシステム全体として、インバータが接続されるため、これらが発生するノイズ電圧に対する耐性が求められます。
図1.充電器システムブロック
そのノイズは、周波数が数kHzから数10kHzで電圧は数十Vのレベルです。
この充電器の出力フィルタ回路を設計する場合、出力回路コンデンサは数百Vの耐圧があり、数十V程度のノイズなら問題ないように思えますが実はそうではありません。
このフィルタ回路は、充電器自身が発生するノイズを減衰させるだけでなく、周辺機器からのノイズに対し共振しないことも必要なのです。
設計中の出力フィルタ回路を簡易シミュレータでシミュレーションしてみると、インバータ周波数帯の近くに大電流が流れる共振ポイントを確認しました。(図2.の改善前は約75kHzで共振しコンデンサの定格を上回る電流が流れています。)
図2.簡易シミュレーション結果
実際に、設計したフィルタ定数の部品を組み込んでインピーダンスアナライザで特性を確認すると、シミュレーションと同じ周波数で大電流ポイントがあり、低インピーダンスになっていることが確認できました。
インバータシステムから見た構成は下図のようになるため、どこかの周波数で共振ポイントが存在します。特に接続ケーブルとコンデンサC1の条件の依存が大きくなります。 接続ケーブルの長さは変更できないため、今回はC1の定数を小さくして周波数を高域に外し、インバータシステムからのノイズ耐量にマージンを取ることができました。
反面、C1を小さくすることによりフィルタの減衰量が不十分になったので、L1の定数を大きくして充電器側からのノイズ電流を低減させて対応しました。
図3.インバータシステムからみた構成図
ただしこれで安心とは言えず、システム内の充電器の搭載位置を変更したり、インバータの高周波化を行ったりすると、ずらしたはずの共振周波数にヒットする可能性が出てきます。
回路図にないインピーダンスも考慮し、お客様との連携を行い対応することが重要となります。
WTIには、インピーダンスを考慮した設計技術を持つエンジニアが多く在籍しています。お気軽にご相談下さい。
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