こんにちは。株式会社 Wave Technology ソフトウェア設計課の白子です。
「IoT」についてはその定義を改めてお伝えする必要もないほど我々の生活に浸透してきました。巷には特別な開発環境がなくてもPCに繋ぐだけで開発ができるような安価なガジェットがたくさん市販されていて、工作マニアの方でなくとも、夏休みの自由研究として手軽にIoTデバイスを工作できるような環境が整っています。
例えばWiFiとBluetoothといったワイヤレスモジュールやSPI、UART、I2C、I2S、PWM、GPIO、SDIO、ADコンバータなどの多彩なインターフェースに加えて温度センサやホールセンサまでが内蔵されているEsp-Wroom-32Dのような便利な開発ボードや、モニタ付きのケースを備えたM5stack/stickC、ATOM Matrix/Liteのような開発モジュールも驚くほど安価に入手でき、興味が有ればIoTデバイスを手軽に実現することができるようになりました。
また、これらの開発ボードに接続できるオプションのセンサ類も下にあげるようなものが豊富に揃っていますので、もはや扱うことのできないデータは無さそうです。
- GPS:位置情報など
- 光センサ:モノの検知など
- 加速度センサ:モノ移動検知など
- 音センサ:音声検知など
- 湿度センサ:湿度測定
- 温度センサ:温度測定
- 歪センサ:トルク測定など
- 重量センサ:重量(変動)測定など
- 磁気センサ:角度測定や開閉検知など
IoTデバイスは誰でも簡単に作れるようになったけど・・・
これほど気軽に開発できるようになったIoTデバイスですが、事業化や製品化を進める場合にはどのようなことが課題になるのでしょうか?
① デバイスの組み合わせだけでは実現できないIoTデバイスの性能
真っ先にあげられるのは、IoTデバイスにはたとえネットワークのサービス障害が発生した場合でもタスクを実行できる信頼性が必要であり、ローカルでのデータ処理や一旦データを保管しておけるメモリ機能を持っておくことなどが必要となるということです。
5G以降の通信インフラにおけるIoTデバイス接続密度は1平方キロメートルあたり100万台に設定されておりクラウドへデータを集約し一括処理できる環境は今後ますます整いますが、これだけの大規模なデータ処理を必要とするシステムを実現するには、各IoTデバイスへ処理を分散させ上位システムへの負荷や通信遅延を解消する必要性も高くなります。
IoTデバイスには「求められる機能」を実現しつつ、「動作を止めない」安定したシステムを実現する必要があるのです。そのため、既存のデバイスを組み合わせるだけではなく、組み込み技術によるデバイスの高機能化とその信頼性の確保が必要となります。
② 省エネルギー、ユーティリティの拡大、大規模用途に欠かせないIoTデバイスの省電力化
例えば低消費電力化はデバイスの機能と信頼性の両方で重要な要素となります。ウェアラブル端末や屋内設備などのように常に充電や電池の交換が可能な機器であれば電源の確保は容易ですが、環境、構造物の状態センシングやインフラ系のメーター計測などの用途では内蔵する電池を頻繁に交換することができないにも関わらず、その稼働期間は長ければ8年以上も保証しなければならない場合があります。
そのために電流容量の大きい電池を備えるだけでは限界が有ります。となると機器の消費電力を抑える手段としてソフトウェアとハードウェアの両面からアプローチし、性能を向上する必要があります。ベースとなるハードウェア設計に加え、各センサの起動時間、起動頻度、通信モジュールの制御や、「組込みソフトウェア作成時のポイントを紹介します|WTIブログ」で紹介したリアルタイム性の確保などを考慮した内蔵マイコンの制御を含むソフトウェア開発技術が重要です。すなわちこれらを総合した組み込み技術が所望の性能を確保するには欠かせません。
③ 対応が必要な課題は他にも
その他にもIoTの領域では、「限られたハードウェアリソースの補完対応」「長い製品寿命を支えるサポート体制構築」「セキュリティ機能の実装、更新」「コスト」などの様々な課題があります。新しい機能を取り込みながら何万台ものデバイスを滞りなく運用するには様々な課題への対応が必要なのです。
このように、市販の開発ボードで機能的には実現できたとしても、製品化や運用に耐える性能や信頼性を確保するためには様々な検討が必要で、開発には経験とノウハウが必要になります。
WTIでは様々なマイコンを使った組込み機器・IoT機器の開発を承っております。豊富な経験をもとにアイデアを形にいたしますのでお気軽にご相談ください。
【関連リンク】
- ソフトウェア開発受託サービス
- IoT機器のOTA導入が意外と進まない理由とは
- IoT時代の開発者が知っておくべき組込みセキュリティ対策とは? PartⅡ
- IoT時代の開発者が知っておくべき組込みセキュリティ対策とは?
- Q-Learningでチーズパズルを解いてみました
- ESP32マイコンでOTA! Wi-Fiでプログラムを書き込む
- M5stackで簡易Wi-Fiチェッカーを作ってみました
- 無線モジュール搭載IoT機器の開発には幅広い知見と技術が必要です
- WTIブログ(IoT関連)
- 無線通信モジュールのコストを抑える方法とは
- IoTのプロフェッショナルを顧客社内に育成する「テクノシェルパ」登場
- ソフトウェア開発時のデバッグのお話 ~ ロジアナを使ってI2C通信を解析 ~
WTIメールマガジンの配信(無料)
WTIエンジニアが携わる技術内容や日々の業務に関わる情報などを毎週お届けしているブログ記事は、メールマガジンでも購読できます。ブログのサンプル記事はこちら
WTIメールマガジンの登録・メールアドレス変更・配信停止はこちら
WTIの技術、設備、設計/開発会社の使い方、採用関連など、幅広い内容を動画で解説しています。