こんにちは。構造設計課の萩原です。
以前に、本ブログで「光ファイバ」についてお話をさせていただきました。
その後、構造設計課に転属しまして、過去にも経験のある信頼性評価と、構造解析を担当しています。
さて今回は「BGAパッケージ」の解析手法について、お話をしましょう。
BGAというのは、Ball Grid Array の略で、集積回路(IC)のパッケージの一種です。簡単に言えば、基板上に電極(ランド)を設け、この上にはんだボールを形成してパッケージ側の電極と接合させる構造の表面実装パッケージです。下の図のようなはんだボールが縦横に並んでいる構造と考えていただければと思います。
BGA実装基板の設計についての詳細はこちらのブログ記事をご参照ください。
図1. BGAパッケージの断面
信頼性試験を実施したサンプルは、BGAに限らず、温度サイクルなどのストレスではんだが劣化していくものですが、はんだボールの状態を確認するための方法として、以下のようなものがあります。
1.染色解析
染色解析は、染色液をパッケージと実装基板に浸透・乾燥させた後に実装基板からBGAパッケージを剥がすことで、剥離面がどういう状態なのかが一目瞭然でわかる解析方法です。
図2.染色解析
図2で、(1)のようにパッケージの周囲に浸透性の高い染色液(赤色など)を垂らします。すると(2)のようにボール間に染色液が浸透します。この状態で70℃~80℃の高温で保存、染色液の溶剤成分や水分などを飛ばして乾燥させます。そして、(3)のように基板の裏面からハンマーなどで軽く叩いて衝撃を加えることでパッケージを引き剥がします。
通常、引き剥がし面はすべて実装基板側でランドごと剥がれ、はんだはすべてパッケージ側に残るのが正常です。もしはんだクラックが発生してボールの途中ではがれた場合、下の図3のようにクラックに染色液が染みこんで、破断面のクラックが入っていたところが真っ赤に染まる、というわけです。
図3.はんだクラックがある場合染色解析の例
写真1は、実装基板からパッケージを剥がした後の、基板側の写真です。
写真ではわかり辛いですが、はんだボールはすべてパッケージ側に残っている状態で、引き剥がし面はすべて実装基板側でランドごと剥がれており、正常な状態です(はんだボールはすべてパッケージ側に残っています)。
2.断面研磨
断面研磨は、文字どおりはんだボールの断面を研磨して観察する方法で、こちらは染色解析のように全体は見渡せませんが、はんだクラックなどの劣化の状態が鮮明にわかるという長所があります。
BGAの場合、熱ストレスなどの劣化は外周部から進行するため、通常は外周の1~2列程度を確認します。まず基板から、BGAが載っているパッケージ部全体を透明な樹脂で埋めてしまいます。樹脂の硬化後、研磨紙で丹念に削っていきます。
実際にはんだボールの断面を研磨して撮影したのが下の写真2 になります。
(a) 正常なはんだボール断面 | (b) はんだボールのクラックのイメージ |
写真2. はんだボール断面 |
このBGAパッケージにはクラックはありませんでしたが、実際にクラックが発生する場合、写真2(b)のようなイメージで発生します。黒い円形に見えるものはボイドと呼ばれる気泡で、はんだ付けの際にはんだ内部のガス成分などが残留して発生するもので、クラックとは特に関係はありません。ただし、ボイドの位置やサイズによっては信頼性に影響する場合もあります。
今回述べた以外に、BGAの解析方法としては、「デイジーチェーン」基板による非破壊の電気的評価も手掛けています。これは信頼試験中に、はんだクラックでオープン(電気的に導通が取れなくなった状態)が発生していないかをリアルタイムで確認する方法です。詳細は、こちらのブログ記事をご参照ください。
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