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パワーMOSFETのアバランシェ試験とは ~その2~

みなさん、こんにちは。
パワーデバイス設計課の中松です。

前回のブログでお話ししたパワーMOSFETのアバランシェ耐量試験の続きです。

前回、アバランシェエネルギーEAS

 

 

で求められることを示しました。

今回は適当なパラメータを持つMOSFETを例にして、計算を行います。アバランシェ電圧BVDSS=600 V、電源電圧VDD=300 Vとすると、L負荷の値L=100 µH、アバランシェ電流IAS=20 Aの場合(ケース①)とL=400 µH、IAS=10 Aの場合(ケース②)ではEAS=40 mJとなり、同じになります。

さて、EASが同じになる条件であれば両者を比較しても良いのでしょうか。

ここで、チップの接合温度Tjを考えます。当然、アバランシェ期間中でもチップの最大接合温度Tjmaxを超えることは許されません。ここではTjmax=150 ℃、ケース温度Tc=25 ℃とします。

アバランシェ期間の時間tAV

 

 

であったため、ケース①でtAV=6.67 µs、ケース②でtAV=13.3 µsになります。

実際のデバイスのジャンクション-ケース間の過渡熱抵抗Zth(t)は複雑な形状で、このままでは手計算は難しいです。今回、Zth(t)は図1であると仮定しますが、今回のケースではアバランシェ期間は数十µsオーダーまでです。この範囲内では両対数グラフ上で傾きが1/2の直線に重なるため、この直線に近似します。つまり、

 

 

で近似できると仮定します。ここではa=10 KW-1s-1/2とします。

 

図 1 デバイスの過渡熱抵抗

 

では準備が整ったため、Tjを求めてみましょう。アバランシェ期間中はBVDSSでクランプされるため電圧が一定で、電流は線形に減少します。したがって、アバランシェ期間中の損失は時間とともに線形に減少し、図2に示す直角三角形になります。

詳細は省略しますが、損失の時間変化がこのような形状で、過渡熱抵抗が図1のように近似できる場合、パルスの半分の時点で温度が最大になり、そのときの温度変化は損失が一定である場合の2/3になります。

 

図 2 アバランシェ動作時の損失と時間の関係

 

したがって

ケース①

 

 

ケース②

 

 

となります。

ケース①ではTjが150 ℃を超えていますが、ケース②では150 ℃を下回っています。
図3にTjと時間のグラフを示します。

 

図 3  Tjと時間のグラフ

 

このようにたとえ同じエネルギーであったとしても、L負荷の値や過渡熱抵抗によって許容される値は異なりますので、注意が必要です。

また、デバイス選定の際に、異なる条件で測定されたデバイスを比較しても、あまり意味はありません。データシート値のみを参考にするだけではなく、できるだけ実動作に近い環境で実測することをお勧めします。

当社には、パワーデバイスの特殊な試験環境と、特殊な試験に対応できるエンジニアがいますので、アバランシェ耐量試験をはじめとする各種パワーデバイスの評価を必要とされる場合は、是非ご相談ください。

 

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