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ノイズ解析のための電気特性モデル

みなさん、はじめまして。東京事業所パッケージ設計課の吉川です。


今回はノイズ解析のための電気特性モデルについて紹介します。

 

◆ノイズ解析の重要性

みなさんがお使いのパソコンやスマートホンなどのデジタル機器は、近年その高速化がめざましく、「CPUの動作周波数が1 GHz(ギガヘルツ)・・・」など、耳にする方も多いと思います。

ちなみに1GHzの動作周波数とは、1秒間に10億回の信号を処理することを指しています。どれくらい速いかというと、処理1回あたりの時間は1ns(ナノ秒)で、なんと、光でも30 cmしか進めません。デジタル機器の根幹をなすデジタルICは、このように超高速で「0」と「1」のデジタル信号を処理しているのです。

そこで問題となってくるのが信号処理の際に発生するノイズです。僅かな電圧変動や時間変動が、デジタル機器の誤動作の原因となります。このため、お客様がICチップを開発するときは、製作後の実機評価でノイズ問題を発生させないためのノイズ解析が重要となっています。

ICパッケージ(以下「PKG」という)やプリント基板(以下「PCB」という)はICチップの電気的機能を外部へ正しく伝える役割を担いますが、ノイズ伝達路となることがあります(図1)。そのため、ICチップだけでなくPKGやPCBの電気特性を考慮したノイズ解析により、規格を満足するか否かの検証を行います。

 

図1. ノイズ伝達路となるICパッケージとプリント基板

 

◆ノイズ解析のための電気特性モデル

PKGはICチップと接続するボンディングワイヤ,リードフレーム,多層基板,BGAボールで構成され、PKGを実装するPCBは多層基板で構成されます。そして、信号種類や電源種類ごとにインダクタンス(L),容量(C),抵抗(R)を記述した回路ネットリストを「電気特性モデル」と呼んでいます。

PKG及びPCBの電気特性モデルをICチップと回路接続した例を図2に示します。ノイズ解析では、PKGやPCBの設計データから電気特性モデルを正しく作成することが重要です。

 

2. 電気特性モデルの回路接続例

 

◆電気特性モデルの種類 ~集中定数モデルと分布定数モデル~

電気特性モデルには、「集中定数モデル」と「分布定数モデル」の2種類があります。(図3)

集中定数モデルはL, C, R をそれぞれ1つの値で定義しますが、分布定数モデルは複数の値で定義します。図3では、LL1+L2+…+Ln, RR1+R2+…+Rn, CC1+C2+…+Cn となります。

 

3. 電気特性モデルの種類

 

デジタル信号波形を解析する場合、集中定数モデルか分布定数モデルかの選択は、信号パルスの立ち上がり時間(tr)と配線長(l )の関係から判断します。立ち上がり時間の1/10以下を集中定数モデルで扱える範囲とすると、集中定数モデルの配線長(l )は式(1)となります。

ここで、td:単位長さあたりの伝搬遅延時間
(基板配線の場合、td ≒6 ps/mm)

例えば、tr =100 ps(pはピコと読みます。ナノのさらに1/1000の小ささです)の信号パルスを解析する場合、集中定数モデルで扱える配線長(l )はl <1.7 mmとなります。配線長が10 mmもあれば、電気特性モデルを6段(=10/1.7)の分布定数モデルで作成する必要があります。
図4に集中定数モデルと分布定数モデルの波形差分を示します。分布定数モデルではデジタル信号の波形ひずみが小さくなることがわかりますね。

 

4. 電気特性モデルによる波形差分

 

最近は、分布定数モデルとしてSパラメータを使用することが多くなりました。信号パルスが広帯域の周波数成分をもつため、高速デジタル信号波形の解析精度が向上することが知られています。Sパラメータについては下記の関連リンクを参照ください。

 

 

【関連リンク】

 

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