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高周波回路シミュレータの活用

みなさんこんにちは。高周波デバイス設計課の藤井です。

私が携わっている高周波の分野では、回路設計を行うにあたって回路シミュレーションの活用が必須になっています。

(当社の高周波(RF)の対応実績はこちら)

例えば高周波アンプの設計を行うときは増幅デバイスのSパラメータなどを元に整合回路を設計し、バイアス回路などの周辺回路も含めて増幅器全体の特性を計算し、回路パラメータを調整して最適な回路仕様を決定します。
これらの作業は非常に多くの計算を必要とするので手計算で行うのは困難です。
回路シミュレータを使うと高速にミスなく計算でき、回路パラメータの最適化機能もあるので、これらを活用することで初めて時間効率の良い回路設計が可能となっています。

一方で、回路の理解が浅くても見様見真似で回路シミュレータに回路入力し、最適化機能をうまく使えばそれらしい結果を得ることもある程度できてしまう場合があります。
これは回路シミュレータを活用する場合の落とし穴でもあるのですが、設計しようとする回路を十分理解していないと本当に効率的な回路設計作業ができない場合もあります。

一例として、ある回路部品の整合回路を設計することを考えてみます。

使用したい周波数帯域は1.9~2.1GHzとします。ここで2つの整合回路を考えました(整合回路Aと整合回路Bとします)。

整合回路Aはインダクタ1個、キャパシタ1個のごく簡単な整合回路、整合回路Bは、インダクタ2つ、キャパシタ3つを使った整合回路です。スミスチャートを使って簡易計算すると、両方の整合回路とも2GHzではちゃんと50Ω整合がとれることが確認できます。
そこで、それぞれの回路をシミュレータに入力し、1.9~2.1GHzの帯域で整合が取れるように回路シミュレータの最適化機能を使って回路定数の最適化を行いました。その結果得られた特性(回路全体のS11)を図1に示しています。
S11は入力した信号がどのくらい反射されるかを示しており、整合がとれているほど値は小さくなります。ここでは整合が取れている目安をS11<-10dBとして考えることにします。

図1.  整合回路の回路シミュレーション結果例

図1の結果をみると、整合回路AではS11<-10dBとなる帯域幅が100MHzほどしかありません。それに対して整合回路BではS11<-10dBとなる帯域幅が300MHzほどあり、目標帯域の1.9~2.1GHzの全域でS11<-10dB得られています。

この違いはそれぞれの回路構成から来ています。

整合回路Aの回路構成では帯域幅を整合回路Bほど広くできず、いくら回路シミュレータを使って回路定数を最適化しても仕様は満足できず時間の無駄となってしまいます。

回路シミュレータでは特性の計算や回路パラメータの最適化が可能ですが、いまのところ最適な回路構成を考えてくれるわけではありませんので、やはり整合できる帯域を広くとるためにはどのような回路にしなくてはならないか知っておくことが重要になります。

今回は非常に単純な例で説明させていただきましたが、実際のもう少し複雑な回路設計でも回路構成が適切でないために仕様を満足する結果にたどり着けないことがあります。

いかに適切な回路構成を考えるかが、エンジニアの知識と経験が問われるところです。

そんなわけで回路シミュレータはとても素晴らしいツールで高周波回路設計にはなくてはならないものですが、回路をよく理解しておくことが回路シミュレータを使いこなす上で重要になると思います。

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