皆さん、こんにちは!東京事業所パッケージ設計課の小笠原です。
今回は自動車に搭載される車載マイコン用半導体パッケージの特徴を紹介します。
◆車載用マイコン用途例
パワートレイン | エンジン制御 etc. |
ボディ | ドア・ウインドウ制御, 空調制御, ヘッドライト制御 etc. |
セーフティ | エアバック制御, ブレーキ制御, 電動パワーステアリング etc. |
皆さんは車載用マイコンと聞いて、民生用と比べた外観上の違いは何だと思いますか?
実は、見た目でわかるような違いはありません。では何が違うかというと、自動車内の様々な制御に使用されるので、振動や周囲の温度変化に耐えて長期的に壊れない高い信頼性を常に求められる点です。命にも関わる重要部品なので製品のライフサイクルは、民生用途が3~5年なのに対して10年以上にもなります。
では、自動車内の長期的な温度変化に着目すると、パッケージにはどのようなストレスがかかるでしょうか?
パッケージの材料は周囲の温度変化により膨張収縮を繰り返します。この時、各材料(チップ、基板、封止樹脂、ワイヤ、マウント材など)の伸び縮みの割合(熱膨張係数)が違うため凸方向や凹方向へパッケージは反ります。パッケージが反ることで内部の材料間やパッケージと実装ボード間に力が加わりクラックや剥離を起こすことがあります。
このようなストレスに耐えうる対策手法について、基板設計、構造設計の観点から2つ紹介します。
1つ目は基板配線の太幅化です。長期的なストレスにさらされても配線が切れないように、民生用より太い配線で設計します。特にチップエッジ直下の配線は切れやすいので、配線幅の考慮が必要です。
2つ目は外部接続端子(ボールランド)の構造です。外部接続端子のボールランドの構造は一般的に下図のようなSMD (Solder Mask Defined)とNSMD (Non Solder Mask Defined)の2種類のタイプがあります。ボールランドサイズが同じであれば、NSMDタイプの方がはんだ接合強度が大きいため、温度サイクル寿命を長くしたい場合は、NSMDタイプを採用することが多いです。
言葉にすれば単純ですが、配線幅を太くすると配線を引ける本数が減ったり、ボールランドをNSMDにするとボールランド間に配線を通すことができなくなったりと制約が増えるので設計しづらくなる傾向になります。
車載用マイコンのパッケージは見た目では違いはわからないですが、車載用マイコン特有の仕様を盛り込み、お客様が満足される品質を提供できるように日々設計技術の向上に努めています。
次回も半導体パッケージを紹介していきますので、「第7弾」?をお楽しみに!
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