電源課の真野です。当課は近年、車関係の業務が増えてきており、私もV2Hという電気自動車の充放電システムに関わっています。
(WTIの電源設計サービスはこちらをご参照ください)
今回はこのV2Hについて紹介させていただきます。
1.V2Hって?
「車両(Vehicle)から(to)家(Home)へ」の略で、電気自動車の電池を家で使うシステムの略称です。
昨今の地震や台風による大規模停電で、「あ゛~こんな時に蓄電システムがあったら…」と、思った方も多いハズ。
私も昨年の停電では風呂に入れず困りました。まさか電気がないとガス湯沸かし器が動かないとは思いませんでした。(最近のは壁のコントローラで操作するようになっていて電気が要るんです)
でも、蓄電システムは超高級品。中でもとりわけ高いのが電池で、実用的な電力(大体10kWh)を賄おうとすれば施工込みで200万円!と車が買えてしまいます。
ならば車を買おうと思うのが人情ってもので、蓄電システムは買わずじまい…。そしてまた停電で「あ゛~こんな時に…」ってことに…。
そこで、もう一歩投資して電気自動車にしちゃうと、車と電池の両方ゲットできます。そしてこの車の電池を家で使えるようにするのがV2Hの役目です。
2.V2Hで何ができる?
V2Hにもいろいろな種類があるんですが、とりあえず標準的なものについて説明します。
(1)基本機能
①車→家庭へ電力供給
まず思いつくのがこれです。まあ、名前からして「車から家へ」ですから、もう停電時には大活躍間違いなし!
電池容量も普通の蓄電システムの約2~12kWhに比べ、車の電池は6.7~62kWh(※1)と大きく、エアコン含め家一軒分なら1日分が、冷蔵庫と照明程度なら数日分の電力が賄えます。
※1. 国産メーカの主な車種において。ホンダ/アコード PHEV:6.7 kWh, 日産/新型リーフE+ :62 kWh
②家庭→車に充電
これも当然できます。しかも一般の普通充電器の半分の時間で充電が済みます。
まあ、これだけですとちょっといい充放電器で「やっぱ買うのは…」となるんですが、これに太陽光発電(以下、PV)が加わると魅力が倍増します。昨今PVシステムをつけられた家も多いはず。活用しない手はありません。詳しくは次の(2)項でご説明します。
(2) PV追加で可能になる機能
①PVの余剰電力→車へ充電
家庭で消費しきれないPV電力の活用先として車に充電できます。
今年は特に2019年問題(※2)で余剰電力の活用先として注目されています。
もちろん停電時もPVから充電できます。
※2. 2009年11月に始まった「余剰電力買取制度(現・固定価格買取制度、FIT)」が10年後の今年は53万件、以降毎年約20万件が満期になりますが、制度開始時の想定買取額に対し実際の買取額が低いため、売電よりも家庭で活用する流れになっています。
②PVのV2H自立出力連系
図Aの平常時の接続に対して、停電時は図Bのように切り替えることによって平常時と同様に家電を使用できます。
ただし、一般にPVの自立出力は1.5kW(100V/15A)で、3kW発電できる日射があっても1.5kWに制限されます(※3)。また100VのためIHコンロやエアコンなどの200V製品は使うことができません。
※3. テーブルタップを接続することを考慮して15Aまでとなっています。ちなみにテーブルタップは2012年に電気用品安全法(別表第四 配線器具)で15Aまたは20Aと規定されました。(もともとコンセントやプラグはJIS C 8303で15Aと規定されています)
これに対して、下図BのようにPVをV2Hの自立出力に連系させると、あたかも停電していないかのようにPVからは見えて通常の系統連系のようにPV電力をフルに使えるようになります。電化製品のコンセントもわざわざ差し替える必要もありません。
また、PV単体だと日射の具合でどうしても電力供給が不安定になるので、それを補うように車の電池を使うことで安定した電力が取り出せるようになります。
図A 平常時
図B 停電時
(3) V2Hの課題
以上ご紹介してきましたようにとても便利なシステムですが、まだまだ新しいシステムですので、課題もあります。
①車の電池を使いすぎてしまうと車が動かない
使いすぎないように指定した電池残量で止める機能がありますが、用心して高めに設定すると使い勝手が悪くなりますし痛しかゆしです。発電用エンジンを内蔵したPHVタイプの車だと値は張りますが安心ですね。
②車の電池の劣化が早まる
車の電池の充電回数が設計上1000回程度で、据え置きタイプの約3000回と比べると少なく、毎日フルに使うと3~4年で車の電池が劣化してしまいます。ただ、実際は深い充放電をせずこまめに使用する程度であれば問題ないとは思います。
以上、V2Hシステムについてご紹介させていただきました。便利なシステムである一方で、克服すべき課題も確かに存在しますが、電気なしでは風呂も沸かせない現代では電力供給の多様性という観点で今後ますますこのようなシステムが増えていくのは確実で、それにまつわる仕事も多くなってくるものと思われます。
そんなときはぜひWTIにご相談ください。
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