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パワー半導体の評価は安全が第一!

みなさん、はじめまして。
パワー設計課の伊達です。

私は主にパワー半導体製品(パワーMOSFET、IGBTのディスクリート品やモジュール品)の評価を行っています。
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今回は、パワー半導体のスイッチング評価を行う上での安全対策について少しお話しします。

本題に入る前に、スイッチング評価について説明します。

スイッチング評価とは、文字どおりパワー半導体のスイッチング時間(立ち上がり、立ち下がり)やサージ電圧、電力損失などの特性を確認するものです。

理想のスイッチング動作は、ON/OFFする際に電流と電圧の遅れ時間がない状態、つまり電力損失の発生がないことなのですが、パワー半導体をスイッチングすると、どうしても遅れ時間が発生してしまいます。つまり、スイッチング時間をいかに短くするかが、パワー半導体の永遠の課題なのです。

その一方で、スイッチング時間を短くすると、回路インダクタンスの影響でOFFした瞬間のサージ電圧が大きくなり、素子が破壊してしまうこともあります。

このように、電力損失対策としてスイッチングは速くしたいけど、速くすることによって別の問題が発生してしまうことなどを、総合的に確認するのがスイッチング評価なのです。

では、スイッチング評価はどのようにして行うのでしょうか?以下に簡単にご紹介します。
図1のスイッチング評価事例を参照してください。

図1.スイッチング評価事例

評価に必要な測定器、備品(コンデンサ、コイルL負荷)、ゲートドライバ回路を以下に従って図1のように接続して評価を行います。

  • 直流電源にコンデンサを並列接続する。
    (直流電源の出力電流以上の電流が必要な場合にコンデンサが必要)
  • 直流電源にL負荷を接続しパワー半導体の出力端子(例えばMOSFETならドレイン)を接続する。
  • パワー半導体の入力端子(例えばMOSFETならゲート)にゲートドライバ回路を接続する。
  • ゲートドライバ回路の入力には、矩形波を入力するための発振器を接続する。
  • オシロスコープで電圧、電流波形をモニターするためにパワー半導体にプローブを接続する。

これで、評価準備OK!
さあ測定開始です。電圧、電流波形から特性を確認します。

でも接続する配線が長い場合は、インダクタンスが大きくなりノイズが発生してうまく測定できないことがあります。その場合は、太い配線でできる限り短く接続するなどの改善が必要となります。

このように、スイッチング評価は簡単にできそうに思えても意外とうまくいかないことがあるのです。


ここまでは、パワー半導体のスイッチング評価について、お話しました。

ここからが本題の「スイッチング評価を行う上での安全対策」の話となります。

パワー半導体のスイッチング評価は、高電圧、大電流条件(例えば、600 V ,300 A)で行うためさまざまな危険が伴います。では、どのような危険があるのでしょうか?

スイッチング評価中は、直流電源に接続するコンデンサやL負荷の接続部は高電圧になっています。また、評価が終わり、電源をOFFにしてもコンデンサが放電していない状態では、高電圧のままです。このような高電圧の箇所に、うっかり触れると感電します。場合によっては取り返しのつかないことにもなりかねません。

もうひとつ、スイッチング評価中に絶対定格値を超える電圧や電流が印加されると、パワー半導体が破壊して飛び散り怪我をすることがあります。

このような危険があるため、安全対策を行った上でスイッチング評価を行う必要があります。

では安全対策(感電防止と破壊による飛散防止)の事例を以下にご紹介します。図1も参照してください。

  1. スイッチング評価中に高電圧が印加される箇所(コンデンサ、L負荷、パワー半導体)に触れることができないように箱で覆う。これは、パワー半導体の破壊による飛散防止にもなる。
  2. 評価完了後は、コンデンサの電圧が0Vまで下がっていることを確認してから、手袋をはめて高電圧が印加される箇所(コンデンサ、L負荷、パワー半導体)に触るようにする。

これらの安全対策は、当たり前のことですが、できていないときに大怪我をするのです。

「パワー半導体の評価は安全が第一!」

常に安全を意識しながら評価を行うことが重要なのです。

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