皆さんはじめまして。東京事業所パッケージ設計課の横山です。
今回は、伝送線路の基礎でもあります『パルス波形の定義』についてお話します。
オーディオなどのアナログ波形に対して、トリガバルスや方形波など、デジタル回路で使う信号波形のことをパルス波形と呼びます。デジタル回路で使う一般的な方形波を使って、パルス波形の定義を説明します。
理想的な方形波は、図1のような波形で回路のすべての波形がこのようであれば、デジタル回路は理論通り動作しますが、実際の回路ではさまざまな原因から、図2や図3のような波形になってしまいます。
図2、図3の基本的な用語について説明します。
①オーバーシュート
信号がLレベルからHレベルへ変化する時、電圧100%より、一時的に大きくなります。オーバーシュートがICの最大定格を超えると内部回路の破壊や寿命を短くする要因となります。
②アンダーシュート
信号がHレベルからLレベルへ変化する時、電圧がマイナスまで下がります。アンダーシュートがICの最大定格を超えると内部回路の破壊や寿命を短くする要因となります。
③リングバック
オーバーシュート、アンダーシュートの反動側の波形をリングバックと呼びます。リングバックがスレッショルド電圧を超えるとLレベル、Hレベルの誤判定を招き論理エラーを起こす要因となります。
④リンギング
最初のオーバーシュートやアンダーシュート後、信号は少しずつ小さくなるオーバーシュートやアンダーシュートとリングバックを繰り返しながら徐々にLレベル、Hレベルに安定していきます。この信号が振動して不安定な状態をリンギングと呼びます。
⑤ステップ(段)
ドライバや負荷の条件、伝送線路の条件によって信号の立ち上がりや立ち下がりの途中で階段の踊り場のように一休みする現象をステップと呼びます。影響としてはスレッショルド電圧に近いとLレベル、Hレベルの誤判定を招き、ステップの期間が長いとタイミング違反を起こす要因となります。
以上ご説明しましたように、実際の高速伝送線路の波形は①~⑤のような要素を持ちますので、理想のパルスに対して実際のパルスは大きく異なります。
理想のパルスは、L⇒H,H⇒Lの変化が瞬時に行われますが、実際のパルスは変化に時間がかかり、信号伝送の遅れや、最悪の場合は伝送自体ができないということも発生してしまいます。
このため、高速伝送線路(DDR)のボードリファレンスデザインでは、伝送線路の波形品質確認及び改善のために、シグナル・インテグリティ(SI)解析を行う工程が必須になっています。
今回は、パルス波形の定義についてご紹介しましたが、次回は構造解析をご紹介します。
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