みなさんこんにちは。WTIデバイス技術部次長(兼)高周波設計第二課 課長の大塚です。
高周波設計第一課長の橘高さんによる『高周波電力増幅器とは?』という回で、“高周波トランジスタの整合回路を設計しています”という話がありました。そこで、今回は私が設計をはじめたころのお話しをしようと思います。
“整合回路”という言葉は、高周波回路の設計に携わったことの無い人にはピンと来ない表現かもしれません。“整合=つじつまが合っている状態”つまり、“整合回路=つじつまの合った回路”ということになるのですが、私も最初に聞いたときはどういうことを言っているのか直ぐには理解できませんでした。そこで、当時の職場の先輩と次のようなやり取りをしました。
私:整合ってどういうことですか?
先輩:簡単に言うと、高周波トランジスタはインピーダンスが数Ω~十数Ωくらいしかないから、
それを50Ωにするってことだね。
私:なるほど。
先輩:じゃ、インピーダンスを50Ωにするにはどうしたらいいと思う?
私:そんなの簡単ですよ、直列に抵抗を入れたら直ぐですね?( ̄ー ̄)ニヤッ
先輩:ハイ、ダメッ・・・(苦笑)
何がダメだったのかお解かりになりますか?
正解は・・・・“抵抗使っちゃダメ!”です。
“高周波電力増幅器”を設計するにあたって“入力された電力を極力ロス無く増幅させる”という大前提があるのですが、直列の抵抗を使うということは回路自体で大きな減衰をさせてしまうことになるのです。
私が出した答えでは、“増幅器”を作らなければいけないのに減衰させてしまう回路を設計しようとしていたことになります。ダメですね~(笑)でも、トランジスタの安定化の為に抵抗を入れることはありますよ。
では、減衰させずに回路を設計するためにはどうしたらよいのかということになりますよね。高周波回路の世界では、基本的にコイルやコンデンサを使用することで解決ができます。(実際には他にもいろいろ使うのですが、話がややこしくなるので省略します・・・。)
「ん?コイルとコンデンサで使用する単位は“Ω”じゃないでしょ、50Ωにできるの?」って思いました?
実は、“インピーダンス50Ω”と“抵抗値R”とは単位が同じでも考え方が異なっているのです。そして、高周波回路の世界ではコイルもコンデンサもこのインピーダンスという考え方をすることになります。
残念ながら、このインピーダンスという考え方について、ここで一度に説明するにはボリュームが多いので、また別の機会に少しずつ説明していけたらなと思います。
ということで、今回は若かりし日の“かわいい過ち”についてのお話でした。
高周波・無線ホームページのリンクを下記に貼っておきますので、興味がありましたら、是非一度ご覧いただければと思います。
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