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高周波帯同軸コネクタはデリケート

同軸コネクタって何?

通信機器設計課の加藤ですこんにちは。通信機器設計課の加藤です。

弊社(WTI)では各種通信システムの構築や高周波特性の評価を行っておりますが、その際になくてはならないのが同軸ケーブルとコネクタです。システム全体を人間の体に例えるならば、その中を循環する血液が高周波信号であり、その血管が同軸ケーブルにあたります。この血管同士を接続し、血管と内臓(部品や計測器)とをつなげる役目を果たすのが同軸コネクタですから、その重要性はご理解いただけるかと思います。
今回は高周波の基本に立ち返って、この同軸コネクタについてお話をさせてください。

写真1.各種同軸コネクタ(プラグ)
写真1.各種同軸コネクタ(プラグ)

写真1は代表的な同軸コネクタの写真です。
左端はNコネクタ、中央がBNCコネクタ、
右端がSMAコネクタと呼ばれる規格です。
代表的な断面構造を図1に示します。

図1.代表的な同軸コネクタの構造

同軸コネクタは嵌合するために原則としてプラグとジャックの2種類の端子構造を持っています。電気的に重要な点は、両者の (1) 中心導体、(2) シェル 同士を低抵抗で確実にコンタクトさせることです。このため、中心導体は凸構造を凹構造に差し込む構造となっており、シェルは固定用ナット等を適切な力で締め付けることでコンタクトを確保します。

 

写真2.各種同軸コネクタプラグとジャック
写真2.各種同軸コネクタプラグとジャック

プラグ(Plug)は「差し込む」「栓」という意味であり、本来は中心導体が凸構造になっている端子をプラグ(オス、Male)と定義していたと考えられます。写真2は上記同軸コネクタのプラグ(写真奥)とジャック(写真手前)が嵌合する直前の状態ですが、いずれもプラグ側の直径がひと回り大きいことがわかります。これは通常凸構造の中心導体を有する端子側が固定用ナット(Nコネクタ、SMAコネクタ)やバヨネット(BNCコネクタ)等「別端子の先端を包み込む部品」を持っているためです。このため転じて「別端子の先端を包み込む部品」を持つ端子をプラグと呼ぶことが一般化しています。上記コネクタはいずれもこの構造です。

写真3.SMBコネクタプラグとジャック
写真3.SMBコネクタプラグとジャック

ところが一部例外として、「別端子の先端を包み込む部品」と凹型の中心導体を有する同軸コネクタ(SMBコネクタ等)も存在します(写真3)。この場合は「プラグ(?):中心導体メス」とでも呼ぶべき構造であり、現時点で通販サイト等でもどちらの端子をプラグと定義するかが統一されていません。もし、あなたが同僚に「SMBコネクタのジャックを買ってきて!」と言われた際には、どちらが必要なのか再確認することをお勧めします。

 

同軸コネクタ嵌合時の注意点

同軸コネクタを嵌合させる際には注意が必要です。

図2.同軸コネクタの嵌合

嵌合させる際には、凸構造の中心導体をまっすぐに凹構造につなげなくてはいけません。これを怠ると、図2右側のように中心導体へのストレスがかかり、凹構造のスロットの一部が広がったり、中心導体そのものが曲がったりする可能性があります。中心導体の変形は特性インピーダンスの変化を意味するため、反射損失や通過損失の悪化を招きます。
さらに特定のコネクタの中心導体が変形してしまうと、その後に嵌合したすべてのコネクタがダメージを受けて、被害が拡大していくため十分ご注意ください。対策は以下です。

  • トルクレンチは最後の締め付けのみに用い、それまでは指で固定用ナットを回す。
  • 指でナットの回転が固いと感じた時は、強引に回さずスムーズに回転する角度を探す。
  • ナットのみを回転させ、プラグ/ジャックのシェルは回転させない。
  • 着け外しの多い同軸コネクタは、定期的に中心導体の状態を確認する。

図3.適切なトルクレンチ使用方法

上記のとおり固定用ナットの最後の締め付けにはトルクレンチを用いますが、その際にも注意すべき点がいくつかあります。図3に適切な使用方法のポイントを示します。
トルクレンチを不適切に使用した場合、同軸コネクタの固定用ナットや保持リングが破損する可能性があります。図4に不適切な使用法の例を示します。

図4.不適切なトルクレンチ使用方法

さらに、ジャック側の固定が難しい場合は、プラグ側のナットを回すとジャック側が一緒に回ってしまうことがあります。これを防ぐためにジャックを別のレンチで固定する時にも注意が必要です。
図5に適切な例と不適切な例を示します。

図5.不適切な固定用レンチ使用方法
図5.不適切な固定用レンチ使用方法

固定用レンチとトルクレンチとの間の角度は 90 °以内に設定することが基本です。角度が 90 °を越えると、無意識に上下方向等に過剰な力が加わり破損を招く可能性があります。

以上のように、高周波部品は、一般的に高価で非常にデリケートなため、思わぬ点にも注意が必要です。せっかく評価や調整に時間をかけても、同軸コネクタが正しく接続されていないと、全てが無駄になることがあります。
弊社(WTI)では、お客様の大切な製品をお預かりして評価することもあり、細心の注意を払って対応しています。また、同軸コネクタやケーブルなどの高周波部品や高周波計測器の使用方法に関する講義も行っております。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

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