みなさん こんにちは。
パワーデバイス設計課の藤田です。
初めての登場になります。
私は業務の中で半導体製品の試験を行っています。製品の信頼性を確認するため様々な試験を行いますが、そのひとつとしてESD試験があります。 ESD試験は私が携わっている半導体製品にかぎらず、電気回路が搭載された製品で幅広く行われています。そのため、実際に業務の中で実施されている方も多いと思いますが、今回は改めてESD試験の意味について、できるだけ分かりやすくお話しさせていただきたいと思います。
まず,ESDとは何でしょうか?
ESDとは「Electro-Static Discharge」の略称で、日本語では、「静電気放電」といいます。みなさん体験されていると思いますが、冬など空気が乾燥した季節に、車のドアを開けようとすると指と車の間に火花がパチ!! そうです。あれがESDという現象です。このパチ!は体感的にも結構衝撃がありますよね。実は数千Vもの高電圧が指と車の間にかかっているのです。
そして、様々な用途に用いられる半導体製品には、ESDの高電圧が印加されても簡単には壊れないことが求められます。
この確認のためにESD試験というのは行われ、試験対象物である製品にESDが発生したことを想定し製品の電気回路が故障しないかを確認します。
ちなみに、ESDが人体との間で発生したことを想定したESDモデルをHBM(Human Body Model)といい、金属のフレームや工具のような導電体との間で発生するとこを想定したESDモデル(例:自動テスタのピンなど)を、MM(Machine Model)といいます。
一般的には、HBMを想定した試験が多いですが、製品の用途なども考慮してMMで試験をする場合もあります。参考までにHBM、MMの試験条件を表1に示します。
表1 ESDの試験方法、条件
では、実際の試験ではどのようにして、ESDを発生させるのでしょうか? 指でパチ!ではなく、静電気試験器という装置があるのです。条件に応じたESDを製品の電極などに印加する装置です。
実際の試験では、
- まず初期電気特性を確認したうえで静電気試験器でESDを印加します。
- その後、再度電気特性を確認し、ESD印加前後の特性変動が規格値内であることを確認します。
- 特性変動が規格値内であれば、特性変動が規格外または故障モードになるまで、ESD印加電圧を上げて同じ評価を繰り返します。
- こうして製品として求められるESD耐量が確保されているかを確認するのです。
- ESD耐量が確保できない場合は、ESD対策回路を見直して、再チャレンジということになります。
今回のブログではESD試験についてご紹介させていただきました。最後までお読みくださいましてありがとうございました。
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