みなさんこんにちは。電源設計課の合田です。
現在私は、パワーコンディショナの開発に携わっています。パワーコンディショナとは、太陽光発電などの再生可能エネルギー(自然エネルギー)を、みなさんが家庭で使っている商用の交流に変換するためインバータ装置のことです。パワーコンデショナを略してパワコンとも呼ばれています。
今回は、パワコン制御の中心となる制御基板のマイコンに搭載されているA/Dコンバータ(ADC:Analog to Digital Converter アナログ-デジタル変換器)関連の話をしたいと思います。
(1)マイコン搭載のADCについて
近年のワンチップマイコンにはほとんどと言っていいほどADCが搭載されています。様々なアナログ信号をデジタル信号に変換して、マイコンで処理できるようにするのがその役割です。
マイコンに搭載されるADCの中でも代表的なものが逐次比較型で、中速度、中~高分解能、低消費電力、小型形状という特徴があります。
図1 ADCの種類と特徴
なかでも電荷再配分方式の逐次比較型ADCが、サンプリングコンデンサをそのままD/Aコンバータ(DAC:Digital Analog Converter。デジタルーアナログ変換器)として使え、従来内蔵されていたR2Rラダー型D/A変換器などの抵抗DACが必要なくなり小型化できるため、主流になっているようです。
マイコンのチップサイズを小さくできるのでチップコストを下げることにも一役買っているという訳です。
(2)ADCの入力ノイズの問題
さて、ADCを使っていてよく聞くのが、データシートに記載されているような性能が出ないと言うことですが、これはADC自体の性能が悪いのではなくて、使っている環境に問題がある場合があります。
マイコンやその周辺回路から発生するノイズの影響で正確な変換ができていない場合が多いのです。
それもそのはず、例えば3.3V電源で12ビットADCを使う場合、ADCの最小単位である1LSB(least significant bit 最下位ビット)は0.8 mVほどしかありませんので、ADCの入力ラインにノイズが乗ると、すぐに数LSB~数十LSBの誤差が生じてしまうのです。
AD入力にノイズが乗るとどうなるか?もう少し詳しくご説明します。
逐次比較型ADCの場合、変換開始前に入力信号のサンプルホールドを行い、ホールドしたサンプリングデータをもとに比較動作に入るわけで、最初のサンプルホールドで正しい値をサンプリングできないと、そのまま正しくない値が出力されてしまいます。
たとえADCが正しく動作していてもノイズによる誤差を含んだ変換データが出てきてしまうということです。
(3)ADCのノイズ対策の具体例
前項でご説明しましたように、ADCは、ノイズによってアナログ信号をデジタル信号に変換する精度が低下していまいますので、ADCの入力回路(AD入力)にはできるだけノイズを除去する対策が必要になります。
そこで重要になってくるのが、AD入力の前段となるアナログフロントエンド設計ですが、通常オペアンプ回路にローパスフィルタを組み合わせた入力バッファ回路が信号源とADC入力間に挿入します。
図2 AD入力バッファ回路構成例
アンプは入力信号レベルなどを調整するとともに、信号源とADC入力間の低インピーダンス化を図り、フィルタはADC入力に入る帯域外ノイズの量を制限しエイリアスを除去したり、チャージインジェクションを低減する効果があります。
定数設定を間違えると余計に誤差が大きくなったりするので注意が必要ですが、適切に設定をすることで入力ノイズを低減することが可能です。
その他にも、AD入力ピンまでの配線長や併走ラインなどの基板設計、ADC駆動に使われているアナログ電源の安定化、変換途中のノイズ混入にも注意し変換タイミングをずらすなどの配慮が必要になってきます。
そして最後には出力されたデジタル信号を平均化することで、ある程度はノイズによる誤差を低減することが期待できます。
以上、ADCのノイズの問題とその対策についてお話をさせていただきました。
私が担当するパワコンのインバータや電源回路は、スイッチングする電圧や電流が大きいため、発生するノイズも様々です。これらの回路に使用するADCにとってノイズ対策の重要性は非常に高く、ノイズによって変換値がずれてしまうとその後の制御にも悪影響が出てきます。
知見とノウハウを総動員してノイズに上手に対処していくことが重要なポイントになります。
WTIでは、電源設計、評価はもとより、ノイズ対策、各種シミュレーション、またリバースエンジニアリング、カスタム計測、機構設計など電源以外のことや電気回路設計以外でも幅広い知識と経験を有しております。何かお困りのことがありましたらまずはお気軽にご相談下さい。
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