みなさんこんにちは。第一技術部の赤谷です。
昨日に続きWTIブログ連投です。どうぞよろしくお願いします。
電源の評価をしていると、低温で出力が発振してしまった!という経験があると思います。
その時、原因として
✓ 出力コンデンサの容量が足りなかった。
✓ コンデンサのESRが低温で高くなった。
など、安易に考えがちです。
これはあながち間違いではありませんが、電源の周波数特性を念頭にもっと定量的に診断し、対策を打つ必要があります。
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そこで位相補償という概念が登場するわけですが、その詳細については「電源回路の安定動作のための位相補償」で紹介していますのでそちらをご参照いただければと思います。
今回の説明では数式を使わず、概念的なイメージで電源の性能についてお伝えしましょう。
まず、電源は以下の図のようにフィードバックのかかった負帰還回路として見ることができます。
このとき、周波数特性による位相のズレが無いとすると、入力に対して位相が180°回った信号がフィードバックされます。
入力信号とフィードバック信号を重ね合わせると下図のようなイメージです。この状態では、お互いの信号が打ち消し合う方向に作用するため、電源として出力は安定しています。
しかし、この負帰還回路にはリアクタンス成分が存在することから、周波数変化と共に利得や位相が変化します。その様子を測定しプロットしたものがボード線図です。「電源回路の安定動作のための位相補償」でも紹介されていますが、利得が1(0 dB)となる周波数で位相が180°変化するとどうなるでしょうか?
上図のとおり、入力には入力信号と同じ位相のフィードバック信号が加わるため、互いに打ち消し合うことはなく、仮に入力信号が無くなったとしても、出力は発振を続ける状態になってしまいます。つまり、正帰還の状態になっていると言えます。
これが電源回路で問題となる発振のメカニズムです。
ちなみに、位相余裕としては60°くらいは欲しいところです。余裕が無いと、温度変化に伴いリアクタンス成分が変化したとき、さらに位相が変化し、変化量が180°に達すると発振してしまいます。
下図は位相補償によって、80°のマージンを確保した状態です。(位相補償後:青線)
ちなみに、利得が1(0 dB)となる周波数(以下、クロスオーバー周波数という)が高いほど、電源としては、負荷変動に対する応答が良くなります。負荷応答性が良いと、出力コンデンサの容量を小さくすることが可能となります。(小型のモバイル機器では重要なポイントです。)このクロスオーバー周波数は、スイッチング周波数の1/10~1/5程度を目安として設計します。つまり、スイッチング周波数が高いほど、負荷応答性が良く小型の電源を構成することができますが、一方で物理的な変化であるスイッチング回数が増えることで、スイッチングロスが大きくなり電力効率は下がってしまいます。
電源設計ではこれらの周波数特性をよく理解し、システム要件に合った設計条件を定義する必要があります。
当社にはパワコンやインバータなどの大型電源を取り扱う電源設計サービスや制御基板などのオンボード電源を取り扱う電気設計受託サービスがございます。もし何かお困りごとがございましたら、お気軽にご相談下さい。
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