はじめまして。システム設計課の長尾です。
私はモバイル通信機器の開発・設計現場で業務を行っております、今日はその中で『改造』作業についてスポットを当ててお話しします。
開発・設計現場での『改造』は、試作評価から問題点を洗い出し、その対策内容を再度試作品に盛り込む(改めて作り変える)作業です。
『改造』には、作業として注意すべき点と設計的に注意すべき点があります。
はんだ付け作業としての注意点
改造作業の大半は、はんだ付けです。
はんだ付けは熱によって溶かしたはんだで基板パターンと部品端子を接合するため、あらゆるケースで熱の扱い(伝わり)方を習得する必要があります。また、改造作業で発生した不具合は大幅な時間ロスになるため、以下を心がけております。
- 部品の大きさに合わせて顕微鏡を使用する
- はんだごては部品の大きさに合ったこて先に適時交換する
- はんだごては2個準備し、共に温度管理できるものを使う
- 使用はんだ(有鉛・無鉛)に適した温度ではんだ付けを行う
- 適量のはんだでフィレットを形成する
- 改造指示部品表・回路図・基板図は同時に確認する
- 基板から取り外した部品の再利用はしない
- 汚れたフラックスは適時洗浄する
- 小型(0603など)サイズ部品は、はんだ付けしたあとで導通確認を行う
設計的に注意すべき点
改造には、回路の変更、追加および削除などありますが、中でも最も多いのが定数変更です。
この定数変更は次のような理由で実施します。
(1)アナデジ・電源分野
- ダンピング抵抗調整
- 基準電圧の変更
- 遅延・電圧検出回路の時定数変更
- 電流の調整
- 受動(抵抗・コイル・コンデンサなど)部品の定格変更
- 水晶発振回路の負荷容量調整
- 増幅器の利得と周波数特性調整
- EMI・EMS対策
(2)高周波の分野
- 低域・高域・帯域・帯域遮断フィルタの周波数特性変更
- 整合(インピーダンス・位相)調整
- アンテナの物理長調整 など
これらの改造内容は、設計者が対策・調整・検討した結果をもとに改造を指示します。
改造を施す側も設計者にどのような目的や意図があったのかを考えて改造作業に落とし込みますが、開発初期では指示された改造内容に違和感を覚えることがあります。
例えば回路に追加した部品が、定格や電気特性を満足していない場合があります。このような場合は追加した部品の妥当性を設計者に確認します。また状況に応じて、定格や電気特性を満足する部品をこちらから提案する場合もあります。
このように製品開発の現場では、改造作業の中でも設計的観点で作業の妥当性を確認することで、製品の品質を確保しています。
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