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熱抵抗を考慮した熱設計を行いたいが…

構造設計課の瀬角です。こんにちは。構造設計課の瀬角です。
近年、電子機器は小型化や高機能化によって温度制限を満足する設計が厳しくなっており、熱トラブルが発生しやすくなっています。電子機器は推奨温度範囲外で動作させると誤作動や故障を引き起こすため、適切な熱設計を施す必要があります。
設計段階において、熱抵抗による温度予測は有用な手法です。しかし、「設計段階で熱抵抗を使って発熱部品温度を予測したものの、いざ試作品を動かしたら部品温度が予測と大きく乖離していた」という経験はありませんか。実は熱抵抗にはいくつかの種類があり、シチュエーションに応じた熱抵抗を選ぶ必要があります。
今回は、熱抵抗を用いた温度予測の注意点を紹介します。

熱抵抗を用いた温度予測の注意点

熱抵抗とは

熱抵抗とは、任意の2点間の温度差を、2点間を流れる熱流量で割ったものになります。(図1)

図1
図1

 

半導体部品の熱抵抗

半導体部品の発熱箇所は、半導体チップのpn接合部(ジャンクション)であり、リードフレーム等を通って部品外部へ放熱します。ジャンクションは部品内部にあり温度を直接測定することはできませんが、半導体部品のデータシートには図2のような熱抵抗が記載されており、これらを使ってジャンクション温度を予測します。

図2
図2
図2

ここで、θはJEDEC規格※で定められた環境条件での熱抵抗です。

θjc :  半導体部品の天面側あるいは底面側へ100%放熱するときの、ジャンクションからケースまでの熱抵抗です。θjc は半導体部品内部の熱抵抗であり、外部環境に依存しません。
θja :  半導体部品を基板に実装し300mm角の箱の中央に配置したときの、ジャンクションから箱内周囲空間までの熱抵抗です。ジャンクションで発生した熱は、部品天面や実装基板を通って周囲空気へ放熱します。θjaは半導体内部だけでなく外部の熱抵抗も含むため、半導体部品を異なる環境に配置した場合、にジャンクションから周囲空気まで熱抵抗はθjaでは表されず、その熱抵抗値も変わります。

 

※JEDEC規格とは、電子部品の標準化を推進するアメリカの業界団体が策定した規格になります。
半導体部品の熱抵抗に関する規格は、以下の番号に記載されています。
JESD51-2, JESD51-5, JESD51-6, JESD51-7, JESD51 -8, JESD51 -9, JESD51 -11

 

どの熱抵抗を使うか

・基本的にはθjcを使う
例として、筐体内において半導体部品をヒートシンクに取り付けたときの温度予測を示します。(図3)
半導体部品のリードフレーム側をヒートシンクに取り付けており、半導体部品の発熱の大部分がヒートシンクを介して周囲空間へ放熱します。
ジャンクションからケースの方向にほぼ100%放熱するため、温度予測にはθjcを使います。

図3
図3

 

ここで温度予測の注意点は、3つあります。

①発熱部品の温度上昇だけでなく、放熱経路(ヒートシンクなど)の温度上昇分も加わる
②複数の発熱部品があると、発熱部品同時がお互いに炙りあってヒートシンク等の温度が上がる
③放熱先の周囲温度が、筐体外部の周囲温度と等しいか注意する

・θjaは参考程度
θjaしか記載がない、あるいは基板に実装しているだけの発熱部品は、θjaを使います。ただし発熱部品の実装環境がJEDEC規格のθja環境ではないため、ジャンクションから周囲空間までの熱抵抗はθjaの値とは異なります。過去製品で似たような実装環境の部品とθjaを比較することで部品温度が過去製品の部品より上がるか下がるかは推定できます。

 

熱抵抗を用いた熱設計にお困りの方へ

電子機器の設計段階において、熱抵抗による温度予測は放熱設計要否を判断するための有用な手法の一つです。弊社はお客様の開発製品に対して、熱流体解析による熱設計支援をしております。
ご不明な点やご要望がございましたらお気軽にお問合せください。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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