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RFパワーアンプの温度特性に注意!

こんにちは。通信機器設計課の日下部です。

最近、お客様から量産品で使用している部品のEOL※1が多数発生し、簡単に代替品が見つからない部品もあり、お困りとのお話をよくお伺いします。

私が担当している無線機のRFパワーアンプEOL対応業務では、現行のRFパワーアンプから型番もメーカーも異なるデバイスを代替品として使用することがあります。そのため、同じ周波数帯域で類似した利得を持つデバイスを選定したとしても、その他の特性が大きく異なるということがよくあります。

先日担当した案件でも現行品と異なるメーカーのデバイスを代替品として使用したのですが、温度特性が大きく異なり、現行品と比べて特に低温時のRF出力電力が低下していました。調査の結果、現行品のデバイスよりも代替品のデバイスの方が温度変化に伴うしきい値電圧Vthの変化が大きく、低温になるとアイドリング電流(RF無入力時の電流)Idqがほとんど流れていないことがRF出力電力低下の原因でした。今回、担当した無線機における現行回路ではバイアス回路に対して温度補償回路がないため、周囲および製品温度が変化してもデバイスのゲート端子に一定の電圧が印加される仕様となっていました。

ダイオードやトランジスタなどの半導体素子は、抵抗素子などと比べると温度によって特性が大きく変化します。例えば、MOS-FETのVthは高温になるほど低く、逆に低温になるほど高くなるため、図.1のようにゲート電圧VGSが一定の場合は低温になるほど電流が流れにくくなってしまいます。

 

図.1

 

このような温度変化によるデバイス特性の変化を制御または抑制するために、バイアス回路に温度補償回路を追加することとしました。

一般的に温度補償回路にはサーミスタやダイオードなどを用いることがあります。各素子を用いた際の温度補償回路の使用例は表.1になります。

 

表.1

 

特性

使用例

NTCサーミスタ

温度が上昇すると抵抗値が低下する。

分圧回路をNTCサーミスタと抵抗で構成し、温度による特性変化に対して補償する。

PTCサーミスタ

温度が上昇すると抵抗値が上昇する。
ある一定の温度に達すると抵抗値が急激に増加する。

温度によって回路の遮断や、突入電流を制御に使用される。

ダイオード

温度が上がると順方向電圧VFが低下する。(約2.6 mV/℃)

分圧回路をダイオードと抵抗で構成し、温度による特性変化に対して補償する。

 

今回の案件では、低温時のRF出力電力の低下は低温時のIdqが低いことが原因となっていました。

そこで、低温時にゲート電圧が高く、高温時にはゲート電圧が低く印加されるような温度補償回路が必要であったことから、図.2のようなダイオードを用いた温度補償回路を追加し、現行品と同等の特性を得ることができました。

 

図.2

 

弊社(WTI)では、EOL対応で、部品の代替調査から、設計変更、評価、各種書類の作成まで幅広く対応させていただいております。お困りの際には、一度ご相談ください。

※1 EOL(End Of Life):製品の販売終了/サポート終了を意味する。電気/電子部品等の販売終了。

 

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