みなさん、こんにちは。高周波機器設計課の松原です。
今回は、高周波電力増幅器(以降「RFアンプ」)の設計、評価として用いられるロードプルについてお話しさせていただきます。
ロードプルの「ロード」は負荷、「プル」は可変(変化)を意味しているようです。したがって、「ロードプル」とは、「RFアンプへの負荷を可変させる」ことを意味すると思います。
■ロードプル(Load Pull)について
それでは本題に入りますが、RFアンプの特性評価には従来からロードプル測定が使われてきました。ロードプル測定は、被測定物(以降「DUT」)であるRFアンプに対して負荷インピーダンスを変化させて測定を行うもので、DUTの出力電力や電力付加効率等が最大となる負荷を求める目的やシミュレーションに使用するデバイスモデルの確認の目的で使われています。
デバイスモデリングについては、以下の当社ブログで紹介されていますのでご覧いただければ幸いです。
当社ブログ:デバイスモデリングとは
整合回路を設計する場合、RFアンプが小信号動作で使われるのであればSパラメータに基づいて回路設計を行います。
しかし、大信号動作ではRFアンプへのRF入力レベルによって、出力電力が最大となる負荷インピーダンスが変化してしまうため、小信号で測定されたSパラメータを用いた設計では合わせこみが必要になります。
そこでロードプル測定の出番となります。実際に負荷インピーダンスを変化させながら測定を行うことで、ゲイン、出力電力、電力付加効率の最適な負荷を見つけ出すことができるのです。
■ロードプル(Load Pull)の測定
RFアンプの出力電力はロード側・チューナの後ろに設置されたパワーメータで測定します。一般的なロードプルの測定系は図1のような構成となります。
DUTの前後にインピーダンスチューナを配置することで、信号源(ソース)側のインピーダンスと負荷(ロード)側のインピーダンスが可変できるようになっています。
図1 Load Pull(ロードプル)の測定系
測定したゲイン、出力電力、電力付加効率の特性をスミスチャート上に等高線でプロットします(図2)。同一の等高線の値はすべて同じ値となっています。
この測定結果からインピーダンスの変化がRFアンプの性能にどのように影響するかが分かります。また、出力電力と電力負荷効率の両方とも高い負荷をターゲットインピーダンス(Z0=30 [Ω]+45[Ω])として設計することで、適切な整合回路のデザインに役立ちます。
図2 出力電力、電力付加効率の等高線(イメージ図)
RFアンプの設計には、高周波シミュレーションが活用できます。ロードプルの結果をデバイスモデルでのシミュレーションと比較することで製品開発の精度があがります。
当社には、通信規格に精通し、高周波アンプ設計や高周波回路設計の経験が豊富なエンジニアが大勢おります。
無線機器や高周波部品の開発でお困りのことがあれば、お気軽にお声がけください。
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