こんにちは、システム設計課ソフトウェア設計ユニットの松嶋です。
Infineon社マイコンチップAURIXTMの評価ボードを使ってLIN(Local Interconnect Network)通信を試すのに先立ち、前回のブログではAURIXTMの概要とLINの必要性についてご説明しましたが、今回はいよいよ通信確認結果のご紹介です。
1.AURIXTMでのLIN通信構成
LIN通信はマスタースレーブ方式であるため、マスター側とスレーブ側と2ノード以上のLIN通信機器が必要です。あいにく、私はLIN通信機器を持っていないため、マスター、スレーブともにAURIX™マイコンボードを使用します。
今回使ったのはInfineon社から販売されている「AURIX™ TC375 Lite kit V2」で、価格は9000円程度です。
20万円近いフル機能のTC398 TriBoardに比べて非常にリーズナブルな値段ですが、実装されているマイコンTC375は3コアで300 MHzで動作し、6つのデルタシグマAD変換器のほか、CAN、ギガビットイーサネットなど主要通信規格をほぼ網羅し、もちろんLINは12Chも用意されています。
さらにASIL-Dもサポートされていますから自動車用のハード、ソフトを開発するのに十分な機能を持っています。
「AURIX™ TC375 Lite kit V2」
ただしLite KitはLINトランシーバーが実装されておらず、LINを使用するためには別途LINトランシーバーが必要なのですが、Lite Kitに実装されているMikroBUSソケットに接続できる拡張ボードが豊富に販売されているため、今回はMikro Elektronika製「LIN Click」を用い、下記のような構成で通信してみました。
LIN通信お試し構成概要
2.LIN通信シーケンス
LINの通信シーケンスは以下のようにプログラムします。
マスターからヘッダID=0x1Aを送信します。ヘッダ信号は以下のような波形になります。
スレーブがヘッダIDを受け取ると割込みでヘッダ受信フラグのレジスタビットに1が立ちます。
スレーブは受け取ったヘッダIDが自分のIDと一致すると(今回は0x1A)レスポンスデータ=0x0248136f + チェックサムを返信するようにプログラムしておきます。レスポンス信号は以下のようになります。
うまく通信できれば、下記のようにヘッダ信号の後にレスポンス信号が返されます。
マスターがレスポンスを受信するとレスポンス受信フラグのレジスタビットに1が立ちます。
以下はオシロスコープで確認した通信波形です。マスターから送信した信号(Break、シンクバイト、ID)をスレーブが受け取ってレスポンス信号(0x0248136f)を返していることが確認できます。
個別に確認してみましょう。先ず、ヘッダです。
期待通り、ブレーク、シンクバイトの後にヘッダID=0x1Aを送信しています。
レスポンスも確認します。
期待通り送信されているようです。
最後に送受信が正常に行われているかをマスタ、スレーブの各ノードのログでも確認してみます。
■マスターノード
ASCLIN Master Mode
##### Loop Start Starting Header Send
Begin loop
Start Header send
Header send complete → ヘッダ送信完了
Response Receive → レスポンス受信確認
Response receive data=0248136f → 受信したレスポンスデータは正常
Preparing for Next Header Send ..... End ######
■スレーブノード
ASCLIN Slave Mode
##### Loop Start Waiting Header Receive
Begin loop
Start Header receive
Header receive complete → ヘッダ受信完了
Response Send
Response Transmit Complete → レスポンス送信完了
Preparing for Next Header Receive ..... End ######
ログによる確認でも問題なく送受信できていることが確認できました。
当社では車載用通信プロトコルLINを含め、常に車載エレクトロニクスの最新情報をキャッチアップして、お客様に最適なソリューションを提供するため邁進しております。車載エレクトロニクス開発案件等でご興味をお持ちなら是非当社の「ソフトウェア開発受託サービス」まで、お問い合わせ頂けると幸いです。
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